ポーランド映画の現在地<4>…巨匠アンジェイ・ワイダの足跡たどる展覧会、つなぐ映画学校
ポーランド映画の巨匠といえば、アンジェイ・ワイダ(1926~2016年)。東京・京橋の国立映画アーカイブ展示室では、ワイダとその作品世界を紹介する展覧会「映画監督 アンジェイ・ワイダ」が今月、開幕した。今回は、その展覧会の概要とともに、ワイダが若い映画作家の創作活動を支援するために、仲間と共にワルシャワに創設した映画学校「ワイダ・スクール」の取り組みについても紹介する。(編集委員 恩田泰子)
クラクフでの回顧展、東京に巡回
国立映画アーカイブでのワイダ展は、2019年にポーランドのクラクフ国立美術館で開催された大規模回顧展の初めての海外巡回で、会期は3月23日まで(月曜日、12月27日から1月5日は休室。12月26日まで同アーカイブでワイダ作品の上映企画も実施)。
ワイダは、世界の映画に新風を吹き込んだ「ポーランド派」をリードした監督であり、「灰とダイヤモンド」(1958年)、「大理石の男」(77年)など、さまざまな作品にポーランドの社会・政治状況を映し出しながら、映画表現の可能性を多彩に広げてきた。過酷な歴史の語り手、文芸映画の名手、そして、文化を通して同国と日本の友好にも大きな役割を果たした人物でもあった。クラクフにある「日本美術技術博物館 Manggha(マンガ)」設立を提唱、開館に尽力したことでも知られる。
今回の展覧会は6章構成。ワイダの軌跡、作品世界を理解する上で重要なテーマごとに展示を見せる。東京展独自の視点として、ワイダと日本の結びつきにも光が当てられている。キュレーションは、クラクフ展も手掛けた映画史家のラファウ・シスカ氏(ヤギェロン大学視聴覚研究所准教授)が中心となって、国立映画アーカイブ主任研究員の岡田秀則氏らとともに行った。
190点の展示品を「立体的」に展示
約190点の展示品の中には、絵画の才に恵まれ美術学校にも学んだワイダの手によるスケッチ、ドローイング、絵コンテも。大半は作品のイメージや構想を描いたもので、画家としての感性もまた、ワイダ作品を貫いていたものだということを目の当たりにすることができる。