「太陽光パネル」再生義務化視野に…経産省・環境省、大量廃棄時代へ制度設計に乗り出した
経済産業省と環境省が太陽光パネルのリサイクルの制度設計に乗り出した。2030年代後半にも迎える大量廃棄時代に備え、リサイクルの義務化を視野に24年内にも議論を取りまとめる。発電事業者からリサイクル事業者に廃棄パネルを確実に引き渡す仕組みや回収した資源の利活用、費用負担のあり方などを中心に詳細を詰める。25年の通常国会への関連法案の提出を目指す。(永原尚大) 【図解】次世代太陽電池の本命「ペロブスカイト太陽電池」の仕組み 経産省と環境省は9月中旬に合同で、太陽光パネルのリサイクルの制度設計に向けた有識者会議の初会合を開いた。制度設計に向けた論点として、両省は太陽光パネルを確実にリサイクル事業者に引き渡すための課題や、各利害関係者の費用負担、既存のリサイクル制度との連携のあり方などを示した。 パネルのリサイクルは利害関係者が多く、制度設計が難しい。製造から発電、解体・撤去、再資源化などで多様な事業者が関わっており、各事業者にかかる費用負担や責任分担の利害調整が求められる。委員からは、メーカーにもリサイクルの責任を求める「拡大生産者責任」の考え方を取り入れる必要性や、発電事業者による廃棄計画の作成を求めるといった意見が出た。 発電事業者が需要家と直接契約するPPA(電力販売契約)で活用するパネルへの対応も検討課題となる。再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)や市場価格連動型制度(FIP)は、事業用の出力10キロワット以上の発電事業者に廃棄費用の積み立てを求める制度を講じている。だが、非FIT・FIPのパネルでは費用の確保策が定められていない。既存の制度との関係性を整理し、発電事業を終えたパネルが放置されない仕組みづくりが求められる。 発展途上にあるパネルのリサイクル技術支援も欠かせない。「太陽光パネルのリサイクル技術は途上段階だ」。初会合では、こうした指摘もあった。銀や銅を資源として抽出できてはいるものの、シリコンやプラスチックは熱回収しており、資源化は不十分だ。資源戦略の観点からも技術の向上や再生資源の利活用の促進が必要となる。 環境省の推計によると、足元のパネル廃棄量は年間約10万トン。30年代半ばから急増し、ピーク時には最大で同約50万トンに達する見通し。現在は産業廃棄物として廃棄量の大半を埋め立て処分している。だが、鉛やカドミウム、ヒ素など有害物質を含んだパネルもあり、廃棄量増加による環境への負荷も無視できない状況だ。