文武両道を貫く張本兄妹の父が、卓球よりも優先したこと【子育てインタビュー】
2024年夏開催のパリオリンピックにそろって出場するなど、日本卓球界を牽引する張本智和、美和兄妹。卓球の実力だけでなく、学校の成績はもとより、通っていた学習塾の全国模試で優秀な成績を収めるなど、共に勉学にも秀でていることは広く知られている。文武両道を地でいく兄妹は、どのように育ったのか。父、張本宇氏に話を聞いた。 【写真】張本美和選手と、父・宇氏
卓球よりも優先した「規則正しい生活」と「勉強」
14歳でITTFワールドツアー・チェコオープンの男子シングルスで優勝し、ワールドツアー最年少記録を更新。2022年に行われたアジアカップの男子シングルスにおいて日本勢では33年ぶりの金メダルを獲得し、世界ランキングも日本男子歴代最高順位である2位にランクイン。18歳で初出場した東京オリンピックでは団体銅メダルを獲得、2024年11月開催のアジア卓球選手権では日本に50年ぶりの金メダルをもたらしアジア王者となった長男、智和。 2021年開催の世界ユース卓球選手権で出場したU-15カテゴリー全4種目で史上初の4冠に輝き、2024年のパリオリンピックでは、女子団体銀メダル獲得に貢献。同年10月、アジア選手権女子団体決勝で中国の強豪たちを次々と撃破し、50年ぶりとなる優勝の原動力となった長女・美和。 若くして才能を開花させた張本兄妹に、幼少期から卓球を教えてきたのが、中国出身で、自身もプロとして長年活躍してきた父・張本宇氏だ。 宇氏が仙台ジュニアクラブのコーチとして来日したのは、1998年のこと。以来、現在にいたるまで25年以上に渡り、元プロ卓球選手だった妻・凌さんと共に、数多くの子供たちを指導してきた。 「智和も美和も、卓球を始めたのは2歳頃からです。練習場にはそれより前、まだ赤ちゃんの時から連れて行っていましたね。私と妻が他の子供たちを教えている間、その子たちの親御さんが、智和の面倒をみていてくれたこともあります」 二人とも卓球場で育ったようなものだが、宇氏いわく、「夫婦でコーチをしていたので、連れていくしかなかった」からで、英才教育のためではなかった。実際、練習時間は、他の生徒と同様、1日2時間が基本。智和氏が小学校高学年になり、大会で活躍するようになってからも、せいぜい3時間程度。週末も1日中卓球漬けということは皆無だったという。 「我が家の教育方針は、『1に健康、2に勉強、3に卓球』。幼少期は、健康に育つことが一番大切ですし、学生なのだから勉強するのは当たり前。私たち夫婦は、子供たちに、その時々にやるべきことを、正しく、きちんと、やってもらいたいと思っていました。 とくに妻は、その気持ちが強かったですね。私自身は、智和が大会に出て、優勝するようになってからは、もう少し練習させたい気持ちもありましたが……。家庭では、奥さんの言うことを最優先するのが一番ですからね(笑)」