なにわ虎男子 阪神D1位・伊原陵人に大商大の恩師・富山監督がアドバイス「大事なのはやっぱり初心を忘れないこと」
阪神の新入団選手にスポットをあてた連載「なにわ虎男子」。第5回はドラフト1位・伊原陵人投手(24)=NTT西日本=の大商大時代の恩師、富山陽一監督(60)が当時を振り返る。勝負ごとにのめり込んでいく性格をたたえながら、初心を忘れないことを願った(随時掲載)。 智弁学園高で甲子園も経験した伊原が進んだ道は大商大。富山監督はマウンド度胸を兼ね備えた左腕に投手らしさを感じていた。 「困ったら伊原、みたいなね。あの子がおれへんかったら大変やった」 部員は毎年約100人という競争必至の大所帯。その中で伊原は早くから主戦となり、2年秋には関西六大学リーグの最優秀投手賞を獲得するなど結果を残した。 恩師の記憶の中で重ねるのがヤクルト・大西。今季60試合に登板して9勝1敗1セーブ、防御率1・34のリリーバーだ。練習に取り組む姿勢もさることながら「伊原は大西と一緒で、調子が悪くてもマウンドに『行きます』と言う子。気持ちができているから、投球練習でも3球投げたらいける。勝負勘があるし、いろんな景色に対応できる勝負強さがある」。マウンドでこそ力を発揮できる点は似通った部分だという。 実績を積んだ伊原は4年時にプロ志望届を提出するも、指名漏れを経験した。当時、富山監督はある計らいをしていた。通常、上位指名が有力な選手の場合は会見場に部員全員を集めるが、伊原の際は届いていた調査書の数なども踏まえ「指名されなかったら恥をかくから、会場には同級生しか呼ばなかった」と、その瞬間をともに待つ人数を制限。それが夢に挑戦する教え子への配慮でもあった。あれから2年、西武から2位指名を受けた渡部らの吉報を控えた今年の会見場では現役部員に向けて「伊原が指名されたら拍手せえよ!!」と指令。ドライチとしてかなえられた夢には、本人がいない場所でも称賛の喝采が鳴り響いた。 「マウンドまで走っていったりできるヤツが、ずっとプロでやっていけるんじゃないかな。大事なのはやっぱり初心を忘れないこと。プロに入る前の気持ち、それがあるから今までやってこられたわけやから」 多くのプロ野球選手を輩出した指揮官からのアドバイス。夢のステージでもマウンドが似合う男であってくれることを期待している。(須藤佳裕)