生物はいつから眠っているのか…睡眠には必ずしも脳が必要なかったという「意外な研究結果」
生物はいつから眠っているのか
ここで、生物はいつから眠っているのか、という問いも立てられる。 「生物は眠っている方がデフォルトで、起きている方が特別である」という言葉が一部で話題になったことがある。 起きている姿と眠っている姿、はたしてどちらが「本来の姿」なのだろうか。 〈生物は眠っている方がデフォルトで、起きている方が特別である。 2021年、ショウジョウバエの睡眠を研究するワシントン大学のポール・ショーは、Science誌の取材に対し、そう語った。彼は2000年に、ショウジョウバエの睡眠をはじめて報告した研究者の一人だ。 私たち哺乳類だけでなく、昆虫であるショウジョウバエから線虫、そして脳をもたないクラゲやヒドラまで、皆眠る。トカゲなどの爬虫類や、ゼブラフィッシュという熱帯魚も眠ることが知られている。どうやらトカゲの睡眠やゼブラフィッシュの睡眠にも、ノンレム睡眠だけでなく、レム睡眠に近い状態があるらしい。トカゲや魚も夢をみているのだろうか。 生き物の分類は、系統樹として表すことができる。ある一つの共通祖先が、枝分かれしていく進化の道筋は、まるで一つの木の根元から、枝が徐々に分岐しているかのようだ。ヒドラとヒトは、約6億年前に分岐したとされている。6億年もの間、違う道を歩んできた。ヒドラが眠るとなると、ヒドラとヒトが分岐する前の共通祖先だって、眠っていたかもしれない。動物はいつから眠るようになったのか? もしかすると、進化の道筋のどこかで睡眠が生じたわけではないかもしれない。生き物はもともと眠っていた。そして、進化の道筋のどこかで、“起きている状態”を進化させたのではないだろうか。ショーが言いたかったのは、そういうことだろう。〉(『睡眠の起源』より) つづく「睡眠は「脳の誕生」以前から存在していた…なぜ生物は眠るのか「その知られざる理由」」では、常識を覆す「脳がなくても眠る」という新発見から、多くの人が知らない「睡眠の現象」という正体に迫る。
現代新書編集部