「死後離婚」なぜ増える?外国人が驚く妻が義実家と縁切りする理由とは
「裏切られた」と憤る義両親
「死後離婚」が話題になる中で、「義両親側の言い分」にスポットが当たったこともあります。先日テレビで「義理の両親」の言い分が紹介されていました。 息子が元気だった頃、息子の妻は義理の両親に対して「老後の面倒は見る」と伝えていたのだそう。その言葉を信じた義両親は、生前贈与を行いました。 ところが、数年後に息子が亡くなってしばらくすると、息子の妻は義父母に事前に伝えることなく「死後離婚」をし、これにて妻は義両親への介護や扶養の義務はなくなりました。生前贈与した分は、妻が持ったままです。義理の両親には「裏切られた」という気持ちが残りました。 死後離婚によって、お墓などを受け継ぐ祭祀承継者にならずに済む、亡き夫側の親族の扶養義務を負わされることが100%なくなる、といったメリットがある一方で、義理の両親との人間関係が悪くなることが懸念されますので、子供がいる場合は慎重になったほうがよいかもしれません。 なぜなら「死後離婚」をできるのは亡くなった人の配偶者(夫が亡くなった場合は妻)のみであり、子供は無関係ですから、子供と祖父母の交流は今後も続く可能性があります。そんな中で、母親が子供の祖父母と公的に縁を切った状態になるというのは、お互い気まずいこともあるでしょう。結果的に子供が板挟みにならないようにするためにも、よく考えて決断する必要があります。 死後離婚によって実務的なことが一気に解消されるかというと、そうではありません。「姻族関係終了届」を出しても、名字は変わらないので、結婚前の姓に戻したければ「復氏届」を出す必要があります。また、死後離婚はどこのお墓に入るのかとも別問題です。 このように書くとあまりメリットがないように思われる「死後離婚」ですが、それでも踏み切る女性が増えているのは、「精神的に楽になる」という面が大きいのかもしれません。届け出をもって「嫌な相手と縁を切れた」と実感でき、心が楽になることもあるのでしょう。 現代の「家族」は戦前と違い、夫婦とその子供が家族で、義両親は厳密にいうと家族ではありません。かといって、結婚をすると双方の「家」との付き合いが始まるわけで、わずらわしいこともあります。「死後離婚」というテーマをきっかけに、「配偶者の両親やその親族との付き合い方」について、今一度立ち止まって考えてみてはいかがでしょうか。(コラムニスト サンドラ・ヘフェリン)