「死後離婚」なぜ増える?外国人が驚く妻が義実家と縁切りする理由とは
ニッポンの七不思議?欧米女性の視点から
夫がいれば「義両親によってもたらされるストレス」にどうにか耐えることができたけど、いなくなった後まで同じ状況が続くのはたまらない――。妻からすると、そんな気持ちが面倒な関係を断ち切る「死後離婚」につながっているようです。ただ、外国で育った筆者にとって「死後離婚」は、「ニッポンの七不思議」のように感じられます。 ドイツの場合、義両親から嫌みを言われたら、妻はすぐに言い返すと思います。嫌みには嫌みで反撃しますし、忙しかったり、体調面で不安があったりすれば、そうした事情も直球で伝えます。だから、「嫁いびりをずっとずっと我慢してきたけれど、夫が亡くなってとうとう限界がきた」という切羽詰まった状況は生まれにくいのです。つまり、「もともと我慢せず言いたいことは言っている」ので、夫がいなくなったのをきっかけとして「義理の両親と縁を切りたい」という思考回路にはならないのです。 ただ、家族との付き合い方がドライだというわけではありません。見方を変えると、ヨーロッパの「家族」は、日本以上に結びつきが強いです。クリスマスや誕生日に、ステップファミリーも含めて「みんなで集まってお祝いする」のは、決して珍しいことではありません。 ドイツ人女性Iさんは、夫と死別後、離婚歴のある男性と再婚しました。Iさんは、亡くなった夫の義父や兄弟を家に招き、現在の夫と一緒にクリスマスを祝います。現在の夫もまた、元妻との間にできた子供たちとそのパートナーを呼び、大勢の“親族”でパーティーをするのです。 Iさんはうれしそうに話しました。「亡くなった夫の父親はかなり高齢なんだけど、秘伝のWeihnachtspunsch(ラム酒にオレンジやフルーツ、ハーブなどを入れるあたたかい飲み物。クリスマスによく飲まれる)を作ってくれるの。これが本当においしくて、毎年パーティーでは大人気なのよ」。 この話から見えてくるのは、ヨーロッパでは「縁あって家族や親戚になった人とは、よほどの事情がない限り交流を続ける」ものだということです。ステップファミリーも含め、皆で無理のない程度に「つながる」のを大事にしているというわけです。 そして、そうしたつきあいの中で何か不満があれば、ため込まずに話し合うのが良い、と考えられています。「ずっと我慢し続け、配偶者が亡くなったのをきっかけに縁を切る」日本流のやり方は、筆者は理解できないわけではないものの、一般的な欧米人の目には、随分と冷たく映るわけです。 「死後離婚」の背景には、「結婚後の女性が義実家とどのように付き合うか」という問題が横たわっているのではないでしょうか。日本では、多くの女性が夫の親族に対して気を使っています。義両親から無神経なことを言われたり、失礼なことをされたりしても言い返せないケースが少なくありません。理不尽な接し方をされ、「我慢に我慢を重ねてきた」ことと「死後離婚」は無関係ではないと思うのです。 巷では、「『家族のつながり』よりも個を優先する『個人主義』が浸透した結果、死後離婚が増えた」なんて言われていますが、筆者は、「もともと義両親に言いたいことを言えていたら、夫が死んでから『縁を切りたくなる』ということには、ならないのではないか……」と推測します。 ところで、ヨーロッパでは配偶者に愛情を感じなくなると、たとえ子供がまだ小さくても、離婚に踏み切る人が多いです。一方で、日本においては、「子供が大学に進学したら」「20歳になったら」「就職したら」「結婚したら」離婚しよう……といった具合に、いったんは保留にし、離婚を先延ばしにしているケースもあるようです。「夫が定年退職したら離婚する」という妻も珍しくはありません。 欧米の感覚からすると、愛情のなくなったパートナーと何年も離婚せずにいるとは、「どれだけ辛抱強いのか」とびっくりしてしまいます。一概にはいえないものの、欧米人は人生は有限なのだから、「一刻も早く自分を居心地の良い空間におきたい」「一緒にいて心地良いと感じるパートナーと巡り合うために早く別れたほうがよい」と考える人が多いです。そのため、「愛情はないけれど長年にわたり夫婦関係を続ける」カップルは、あまりいません。