名伯楽・内田順三も一目置く努力の天才は、30歳で史上最高齢ドラフト指名を目指す
今シーズン、日本野球機構(NPB)にファーム(2軍)リーグ限定で新規参戦した「くふうハヤテベンチャーズ静岡」(以下、くふうハヤテ)。同時に参戦した「オイシックス新潟アルビレックス・ベースボール・クラブ」は独立リーグの老舗球団だったが、くふうハヤテは母体も何もない、まさしくゼロから立ち上げられたチームだ。 【写真】独立リーグ監督になった元メジャーリーガー 開幕から約3ヵ月が過ぎた6月末、くふうハヤテに密着取材し、野球人生をかけて新球団に入団した男たちの挑戦を追った。 前回に続き、社会人、独立リーグ、メキシコリーグでプレーしてきた187cmの大型右腕、平間凜太郎(ひらま・りんたろう)の新たな戦いに迫る。(全15回連載の4回目) ■「平間、年齢詐称しろ」 独立リーグ・高知ファイティングドッグスからメキシコのプロリーグを経て、くふうハヤテの中継ぎ、抑えとして好成績を残している平間凜太郎。自身の強みについて聞くとこう答えた。 「僕は子供の頃から、好きなことに対して頑張ることだけは得意なんですよ。頑張るというか、自分のやるべきことを本気で探して、これだと思ったことを信じてやり続けて、モノになるまで粘り続ければ、それは間違いなく大きな経験や技術になります。仮にうまくいかなかったら、それは自分に合わなかったというだけなので。 これだけ情報が溢れた時代なので、ひとつに取捨選択することはすごく難しい。なので、まずは自分自身を知り、理解するための努力が求められるかもしれません。今、自分は正しいと思える道が見つかり、歩むことができています。 自分は記事などでも『苦労人』という言葉で表現されることが多いですが、一切、苦労人という感覚はなくて、逆に『好きなことを見つけられて、それに対してやるべきこともハッキリしているめちゃくちゃラッキーな人間』と思っています」 平間の目標は、レベルの高い海外のプロリーグで野球を続けること。一方で、NPB12球団入りも諦めてはいないが、現在30歳という年齢から、かなり厳しいことは事実だ。そんな中、ある人物がこう声をかけてきた。 「平間、年齢詐称しろ」 声の主は、打撃アドバイザーとして毎月10日間程度くふうハヤテに合流する内田順三コーチ。広島、巨人で数多の名選手を育てたことで知られる。 平間は球界のご意見番、生き字引きのような存在の内田コーチに対しても臆することなく質問を繰り返している。素直な性格、野球に対する純粋さ、貪欲さが気に入られたのか、内田コーチのほうから話しかけてくることも多くなった。 取材した6月24日、遠征先の福岡から静岡に戻る機内で、平間は内田コーチに呼ばれ、隣の席に座るように促された。そして言われたのが、「平間、年齢詐称しろ」だった。 「平間は経歴が変わっているらしいじゃないか」と声をかけられたのが最初のきっかけだった。平間が社会人、独立リーグ、そしてメキシコまで渡った自身の野球歴を話すと、内田コーチは興味津々に聞いてくれた。 そしてこの日、福岡から戻る機内でも隣の席に呼ばれて会話をする中で、30歳になったいまなおNPBにドラフト指名される夢を諦めていないことを告げると、「平間、年齢詐称しろ。NPBのスカウトに話しかけられたら、『本当は23歳です』と答えなさい」と言われたのだという。