6連勝のSAGA久光スプリングス 結束力に欠かせない副キャプテンのセッター万代真奈美 「どれだけバレーがしたいのか…」悩んだ時間が導いた境地【SVリーグ女子】
◆心揺さぶられた「西→万→吉」
バレーボールの大同生命SVリーグ女子で初代女王の座を狙うSAGA久光スプリングスが調子を上げてきた。4、5日の両日に練習拠点のサロンパスアリーナ(佐賀県鳥栖市)で行われた年明けの2連戦でPFUブルーキャッツ石川かほくをいずれもストレートで連破。6連勝で通算14勝8敗とし、6位(14チーム中)に浮上した。 ■ここにも「つなぎ」の姿勢が…万代真奈美選手が報道陣に寄せた気配りの直筆メッセージ【写真】 強く印象に残ったのだろう。5日の取材ノートを見返すと、「西→万→吉」と走り書きした第2セットの20点目をぐりぐりの二重丸で囲んでいた。私はレシーブ、トス、アタックの流れを姓の最初の文字でメモしている。つまり「西」はリベロの西村弥菜美(24)、「万」はセッターの万代真奈美(26)、「吉」はオポジットの吉武美佳(21)を指す。 第2セットの中盤に、万代と吉武が「2枚替え」でコートインした。19―12から西村が相手の強打を右手一本で受け、バックトスで万代がつなぐと、吉武がライト側から仕留めた。これでPFUを完全に突き放す6連続得点となり、試合の流れを決めた。 現在の連勝は入団3シーズン目の深澤めぐみ(21)と同2シーズン目の北窓絢音(20)の両アウトサイドヒッターが原動力になっている。その一方で見逃せないのが、この日の西村や万代がそうだったように安定した「守り」と丁寧な「つなぎ」が、最終的に吉武も含めた若手を輝かせていることだ。バレーボールは一球、ワンプレーで優劣が入れ替わるだけでなく「得点」と「失点」に直結する。私が心を打たれた場面はサーブで攻めて、西村の堅守から切り返し、万代のトスワークで編み出した得点でもあった。「次の1点」を防いでからの「次の1点」が余計に頼もしく映った。 【#OTTOバレー情報】
◆「どうチームに関わっていくのか…」
万代は昨秋に指を痛めるなどコンディションにも苦しんできた。副キャプテンの要職に就きながら、ユニホームを着られずにチームメートのサポートに徹する試合も少なくなかった。「どれだけバレーがしたいのか、(自分を)プレーでどう表現したらいいのか、どうチームに関わっていくのか…。悩むときもありましたが、それは自分を振り返る大切な時間になりました。だからこそ、その時間を無駄にしないようにプレーしています」。かみしめるような口調で明かした。 昨年12月29日のKUROBEアクアフェアリーズ戦でも、酒井新悟監督(55)は万代と吉武を「2枚替え」で投入。吉武が担うライト側からのオフェンスを万代が機能させたこともあり、セットカウント3―1で逆転勝ちした。「万代はけがで出遅れて、これまで納得のいくプレーができていなかったのは事実です。でも、彼女はスプリングスの副キャプテンです。しんどい状況でチームを助けてほしいという意味でKUROBE戦では起用しました」。年明け2連戦も同様のスタイルで臨み、セット中盤以降の苦しい時間帯を乗り切った。 「万代が吉武の力を引き出して、ああいうパフォーマンスをしてくれることで(正セッターの)栄(絵里香)やステフ(オポジットのステファニー・サムディの愛称)に一つ間を取らせて、次(セット終盤)に向かわせることができる。貴重な時間になっています」 チーム最年長の33歳で主戦セッターを務めるキャプテンの栄は健在ながら、長丁場のシーズンを考慮すれば、負担の軽減は不可欠。酒井監督にとっても万代の存在は心強い限りだ。「より多くの選手に出場機会を与えながら、全員で戦っていけるようにチームのレベルを上げていく」との言葉の真意はここにある。 「ベンチでアップをしているときに、ミカ(吉武の愛称)が『全部、私に持ってきてください!』と言ってくれるんです。その言葉をもらえるだけで、思い切ってトスを上げられます」。万代が感謝した。結束することで、大きな力が出る。1勝、1敗の重みが増すシーズン後半。試合展開に応じて途中からコートに入る選手たちの覚悟も問われるだけに、この吉武の心意気がうれしい。一球、ワンプレーへの確かな「熱量」が真冬の連勝ロードを支えている。(西口憲一)