明治安田生命の中計が大転換、「生命保険会社の役割を超える」ワケ
明治安田生命の2024~2026年の中期経営計画では「生命保険会社の役割を超える」を掲げ、保障やアフターフォローを基軸としつつ、「ヘルスケア・QOLの向上」と「地域活性化」の2大プロジェクトに注力する方針を示している。明治安田生命から「明治安田」へのブランド通称変更も含め、生命保険の枠を超えた事業展開を目指すというが、具体的にはどんな戦略を立てているのか?矢野経済研究所 ICT・金融ユニット 主任研究員 山口 泰裕氏が同社の 中期経営計画を読み解く。 【詳細な図や写真】2「大」プロジェクトの取組み(出典:明治安田生命保険「MY Mutual Way 2期」)
「生命保険会社の役割を超える」明治安田生命の中計
明治安田生命は、2024年3月に中期経営計画(2024~2026)を発表した。 「生命保険会社の役割を超える」を掲げたうえで、保障とアフターフォローの提供をコアとしつつ、「ヘルスケア・QOLの向上」および「地域活性化」の2大プロジェクトへの取組みを強化し、「生命保険会社としての役割の拡張」を狙ったことがうかがえる。 そうした宣言をブランド通称にも反映すべく、「明治安田生命」から「明治安田」へと変更するとした。 具体的には、国内生命保険事業や資産運用、海外保険事業を成長領域と位置付けた「成長戦略」と、戦略を支える基盤として、経営資源の拡充や経営体制の強化、そしてIT・デジタル化に向けたさらなる強化といった「経営基盤拡充戦略」の2つの戦略を進めていくとして、具体的な取組みについて記載している。 本稿では、大きく3つの点──「営業サービス・フロントのさらなる強化」「生命保険の機能の拡張」「IT・デジタル投資のさらなる推進」「ひと中心経営の推進と働きがいの向上」について次項以降で記載する(「ひと中心経営の推進と働きがいの向上」は営業職員である「MYリンクコーディネーター」の処遇の見直しや採用などについて言及しているため最初の項目で触れる)。
ポイント(1):営業サービス・フロントのさらなる強化
「営業サービス・フロントのさらなる強化」について。同社の営業職を指す「MYリンクコーディネーター」の採用および生産性の向上と併せて、同社の強みである団体保険のさらなる強化に向けた法人営業と個人営業とを連携、退職時の個人保険へのスムーズな移行に向けた取り組みを進めている。 (1)個人営業の強化 まず個人営業の強化である。「MYリンクコーディネーター」の採用および生産性の向上について、MYリンクコーディネーターの待遇向上として2023年度に約7%引き上げたものの、2024年度もさらに約4%引き上げることで、職業魅力度の向上を図るとする。 この一要因として、MYリンクコーディネーターの在籍者数推移をみると、2023年度末で3万6469人と、毎年度末で平均100.5%程度を伸ばす必要があるものの、2022年度末は前年度比100.04%であり、現状の施策では難しいとの危機感も背景にあると思われる。 また、MYリンクコーディネーターのうち、一定水準以上の生産性などを備えた人材である「アドバンス」層を拡大することで、人材の量と質の双方について強化していく考えである。 生産性向上については、2024年10月から営業職員の「デジタル秘書」といえるアプリ 「MYパレット」の導入を順次図っており、2025年度以降は入力された多彩なデータをベースに、AIが入力データなどを分析、営業活動・提案をサポートしていくなど、営業職員の生産性向上に向けて取組んでいくとする。 また直近、2024年12月にはamptalkに出資、商談解析技術などの活用などさらなる営業活動の効率化を図るべく取り組んでいる。 明治安田生命は、新中期経営計画上ではKPIとして新契約における年換算保険料は挙げていないものの、推移をみておきたい。 コロナ禍に伴いピーク時から大きく下がったものの、2022年度は1,631億円と回復、2023年度は外貨建一時払保険の販売量減少の影響を受け、1,285億円と減少したものの、順調に回復している。個人営業の強化は、コロナ前を上回る底堅い成長に向けた施策といえよう。 (2)個人営業と法人営業の連携によるシナジー強化 次に団体保険を担う法人営業の強化がある。団体保険については、同社は高いシェアを持っており、さらなる差別化に向け、顧客用サイトのUI/UXの改善とともに、2024年4月から従来の地域本部に加え、新たに地域リレーション本部を設置、全地域をカバーする。これにより、地域の企業や自治体などとの接点を強化するなど体制強化を図ってきている。 加えて、直近2024年11月に出資したmiiveが手掛ける福利厚生サービスをはじめ、医療系商品の拡充やサービス開発を図るなど、UX面や体制面、サービス面の観点から法人営業の強化を図っていく考えである。 さらに退職後のサポートにも力を入れていく。実際には個人営業を担うMYリンクコーディネーターと連携、退職時に個人保険への移行ができる制度の導入団体を拡大していく形で一貫したサポートを提供していくほか、MYリンクコーディネーターも団体保険販売を拡大していくとしている。