明治安田生命の中計が大転換、「生命保険会社の役割を超える」ワケ
ポイント(3):IT・デジタル投資のさらなる推進
そして最後に、「IT・デジタル投資のさらなる推進」である。営業面や商品面を支える基盤としてデータ分析基盤や、ホストシステムとパブリッククラウドとの連携を含めた柔軟な基盤の整備を進めている。 業務のさらなる効率化・高度化として、AIの活用とデータの利活用を挙げる。AIの中には、生成AIの活用も含まれる。 生成AIについては、2023年4月からChatGPTの活用に向けた実証実験を実施、2024年1月にはイライザ(ELYZA)やカラクリと連携し、コミュニケーションセンターでの顧客との応対メモの自動作成や社内照会におけるQ&Aの自動作成など業務効率化を進めている。 なお、こうした取組みは大手生命保険会社において進めており、2025年以降、どこまで生成AIを業務に適用していくのか、注視したいところである。 次にデータの利活用を支える分析基盤については、AWSを採用しパブリッククラウドを推進、顧客単位で集約・蓄積する柔軟なデータ集約・分析基盤へと刷新。パーソナライズ化に向けた最適な提案やニーズに沿った商品・サービスの開発を進めている。同社では、特約であるベストスタイル 健康キャッシュバックに付加した「MY健活レポート」を含めた、さまざまな独自データを収集・アウトプットする仕組みを備えており、こうした取組みを更に充実、推進していくものとみられる。 併せて、システムアーキテクチャについても刷新。同社は2019年からクラウドリフトを進めており、従来のホストシステム活用の最適化とパブリッククラウドの活用促進に取組んでいる。 SoE(System of Engagement)やSoR(System of Record)で取り扱うデータをSoI(System of Insight)で分析する、各領域を相互補完する仕組みを構築している。
「生命保険会社の役割を超える」本気度示すブランド通称変更
さてここまで記載してきた3つの取組みは、これまで大手生命保険会社の中期経営計画を見てきた通り、多くの生命保険会社が中身に違いはあるものの、概ね共通して取組んでいるといえる。 そうしたなか、明治安田生命はブランド通称について、あえて「明治安田生命」から「明治安田」へと変更した点は注目される。あえて「生命」を削除、生命保険をコアとしつつ、更に拡張していく覚悟ともとれる。 具体的には、ポイント2つ目で挙げた、戦略的商品である「ベストスタイル 健康キャッシュバック 循環器病 対策Pro」・「循環器病 対策Pro」が示すように、健康時から疾病の罹患、治療・重症化予防に至るまで一貫したサポートに向けて保険商品と非保険を組み合わせた方向性が指し示しているといえよう。 また、こうした一貫したサポートは、営業面でも垣間見える。記載したとおり、個人営業と法人営業の連携により、就職先での団体保険を通じたサポートから退職時の個人保険へのスムーズな移行に向けた取組みを推進している。 そしてこうした一貫したサポートを支える、柔軟なデータ分析基盤を構築することで、顧客ごとのデータを集約、パーソナライズ化に向けた取組みを進めている。 循環器病に限らず、他の疾病についても健康時から重症化予防に至るまで一貫した、よりパーソナライズ化した保険商品を開発、「循環器病 対策Pro」に続く第2弾、第3弾の向けた戦略的商品を提供していくものとみられる。