イタリア代表復権の鍵はセリエB? 真の強豪に返り咲くために。 "メイド・イン・イタリー"プロジェクトの全貌【コラム】
ユーロ2024(EURO2024)では散々な試合内容でラウンド16敗退となったイタリア代表だが、9月に開幕したネーションズリーグでは2連勝と幸先の良いスタートを切った。それでも、アッズーリ復権にはまだ時間が必要と、アリーゴ・サッキが言うように、イタリアではストライカー不足の問題に直面している。(文:佐藤徳和)
⚫️試合放棄のタオルを準備した
アッズーリにとってのUEFAネーションズリーグ24/25は、戦慄のスタートで始まった。4万4956人の観衆を集めた敵地、パルク・デ・プランスで行われたグループAのフランス代表との一戦。開始からわずか14秒で失点を喫した。 3バックの一角に入ったジョバンニ・ディ・ロレンツォが右サイドでブラッドリー・バルコラにボールをかっさらわれ、為す術もなく先制点を献上。守護神ジャンルイジ・ドンナルンマは主審に詰め寄り、キーパーグローブを装着する前にキックオフの笛が吹かれたと訴えたが、聞き入れられるはずもなく、電光石火のゴールは認められた。 今夏開催のUEFAユーロ2024(EURO2024)のアルバニア代表との初戦でも、アッズーリは、フェデリコ・ディマルコの不用意なスローインを相手に奪われ、開始23秒に失点している。このときは、その後逆転に成功し事なきを得たが、今回の試合の相手はキリアン・エムバペを擁し、FIFAランキング10位のイタリアに対して2位に君臨するフランスだ。もはや逆転は不可能。このまま失点を積み重ね、試合を放棄するためにタオルを投げることが必要になるのではないかと思えるほどだった。 実際、ダビデ・フラッテージも試合後のインタビューで、「なんてことだ。0-6で試合が終わるんじゃないか」と悪夢がよぎったことを明かしている。しかし、フラッテージの不吉な予感は杞憂に終わった。
⚫️圧倒的に分が悪い強豪相手に逆転勝利
6分、ロレンツォ・ペッレグリーニのクロスをアンドレア・カンビアーゾが頭で折り返すと、フラッテージのヘディングシュートは惜しくもポストを叩いた。得点を挙げることこそ叶わなかったが、希望の光が差し込む、そんな華麗な攻撃だった。 そして30分、1-1の同点とする。カンビアーゾのサイドチェンジをディマルコがダイレクトではたく。これをサンドロ・トナーリが技ありのヒールでディマルコが走り込んだスペースに流すと、ディマルコがアウトサイドにかけた左足ボレーで豪快にネットに叩き込んだ。 51分には、右サイドからマテオ・レテギの正確無比なクロスをフラッテージがダイレクトで押し込み2-1と逆転。74分には、デスティニー・ウドジェのパスを2列目から切り込んだジャコモ・ラスパドーリが冷静に流し込んで追加点を奪い、3-1と見事な逆転劇で勝利を手繰り寄せた。 イタリアは1978年ワールドカップ(W杯)で、フランスを2-0で倒して以降、14回対戦してわずか2勝しか挙げられず、4分8敗(2006年W杯決勝は、PK戦での勝利のため引き分け扱い)と圧倒的に分が悪かったが、EURO2008以来の勝利を収め、連敗を3でストップ。アウェイでは1954年にパリで行われたテストマッチ以来、実に70年ぶりという白星であった。 過去のデータから見ても、最近のイタリアにとってフランスを倒すことがいかに難しい至上命令であったことが伺える。その上、開始14秒での失点。苦手とする相手に、自らハンデを課すような過ちを犯した中での、価値ある勝利であった。