「ジョーカー」より

10月11日（金）、期待の新作〝ジョーカー2〟こと「ジョーカー：フォリ・ア・ドゥ」が日本公開となる。大ヒット映画「ジョーカー」（2019年）の続編にして最終章となる今作の公開に合わせて、これまで人気キャラクター「ジョーカー」を演じてきた名優たちと、それぞれのジョーカーの特徴や魅力を振り返る。 【写真】第81回ベネチア国際映画祭を訪れた「ジョーカー：フォリ・ア・ドゥ」のトッド・フィリップス監督、レディ・ガガ、ホアキン・フェニックス

シーザー・ロメロ：「バットマン」（1966～68年）およびその映画版（66年）

ジョーカー初めての実写化は、テレビドラマシリーズ「バットマン」だった。このシリーズは子どもも見やすいコメディータッチの作品であるため、その後登場するジョーカーたちに比べると〝クラウン（道化）〟色が強い印象だ。コメディアンであるロメロが演じたのもそのためかもしれない。

ジャック・ニコルソン：「バットマン」（89年）

コミック版のジョーカーといえば、濃いメークと、目や口を大げさに使ったインパクトのある感情表現、強烈な笑顔が印象的なキャラクターだ。ティム・バートン監督が手がけた「バットマン」でジャック・ニコルソンが演じたジョーカーは、歴代ジョーカーの中でも特にその〝強烈な笑顔〟を忠実に再現することでインパクトを与えたジョーカーだろう。 ニコルソンはホラー映画「シャイニング」（80年）でポスターにフィーチャーされた狂気的な笑顔でもおなじみの名優。その巧みな表情筋はジョーカー役でも生かされ、笑っているのにおぞましい印象を与える〝張り付いたような笑顔〟が再現された。 「化学薬品入りのタンクに落下したことで肌がただれ、表情が固まってしまった」という原作のジョーカーの有名なバックグラウンドが採用され、作中で明確に描かれているというのも「バットマン」版ジョーカーの特徴といえよう。

ヒース・レジャー：「ダークナイト」（08年）

クリストファー・ノーラン監督がバットマンを描いた「ダークナイト」3部作（05～12年）の中でも観客・批評家の双方から高い評価を受けている2作目「ダークナイト」。ジョーカーはこの「ダークナイト」に登場し、映画史に残る悪役のひとりとなった。今作のジョーカーはひたすら人を堕落させ、世界の秩序を壊すことに快楽を覚えている、まさにキリスト教における悪魔のような〝純粋な悪〟だ。 歴代でもっとも〝サイコパス〟という言葉が似合うこのジョーカーにとっては、正しくあろうとするバットマンが人を殴ったり殺したりすることで信条が壊れることは一番の悦（よろこ）びである。ジョーカーに対していくら暴力を振るおうと、極論命を奪おうと、〝ジョーカーの勝ち〟になってしまうというのが彼の恐ろしく、不愉快なところである。 今作でジョーカーを演じたのは、ヒース・レジャー。彼はホテルに6週間閉じこもり、犯罪者の思考回路を専門書で研究したり、ジョーカーになりきって日記を書いたりと徹底的な役作りを行った。 完成した〝悪のカリスマ〟ジョーカーの演技は米アカデミー賞で助演男優賞を受賞したが、彼は受賞当時すでにこの世を去っていた。ニューヨークの自宅で全裸で亡くなっているところを発見された彼の死因は薬の併用摂取による急性薬物中毒（事故死）だとされているが、「ジョーカー役にのめり込みすぎて心身に異常をきたしたのではないか」との言説がいまだに広くささやかれているのもうなずけるほどに、キャラクターの完成度が高かったのだ。 ちなみに今作のジョーカーはシーンによって自身の過去について語るエピソードが異なっており、過去の回想も存在しないため、バックグラウンドが非常に謎めいており、そこも彼の魅力になっている。