弾劾決議案「不成立」、首の皮一枚で残った韓国・尹錫悦大統領、推し進めてきた日韓関係改善はどうなる
■ 尹大統領の謝罪と与党への歩み寄り、弾劾案不採択への流れを作る 非常戒厳による状況打破に失敗した尹大統領は、善後策を模索する。 7日午前10時からは国民向け談話を発表した。その中で尹大統領は「非常戒厳」を宣言したことについて「国政の最終責任者である大統領としての切迫感から始まったが、国民を不安にさせ、また不便をかけ、まことに申し訳なく、心からお詫び申し上げます」と謝罪した。 自らの進退については言及しなかったものの、「私の任期を含めて政局を安定させる方法は党に一任する」と述べた。大統領の任期を5年から4年に短縮する案が議論されているのを意識したものであろう。 こうした談話は、譲歩を嫌う尹大統領としては不本意であったことだろう。しかし、野党が提出するとしている弾劾決議案に、与党「国民の力」から8人が賛成に回れば、可決されてしまう状況にあった。与党内は決議案を否決するよう動く方針を示していたが、韓東勲代表や安哲秀(アン・チョルス)議員など賛成に回るという見方も出ていた。 こうした中で、与党を団結させ、決議案を否決するためには、与党に歩み寄る必要があると判断したのだろう。国民の力は4日開いた議員総会でも、尹大統領とは一線を引き、弾劾案反対の立場を取る一方で、尹氏に離党を求めた上で、挙国一致内閣をつくるべきだとの意見が主流だったようである。 しかし、それでも「国民の力」の韓代表は「大統領は正常な職務遂行が不可能な状況で、早期退陣は不可避だ」と大統領の謝罪は不十分だと述べていた。 国民の多くも、尹大統領のメッセージは「場当たり的な謝罪だ」と感じていたようで、とても納得しているとは言えない状況だったようだ。
■ 韓東勲代表の胸の内 注目された弾劾を巡る決議案の採択は、7日(土曜日)の午後5時から国会本会議で行われた。 国民の力は7日朝から緊急の議員総会を開催して対応を協議し、否決する方針を確認した。同党が弾劾決議案否決の方向を取るのは、現時点で大統領選挙を行えば、野党系の大統領が当選する可能性が高く、少しでも時間稼ぎをして、党勢立て直しを図りたいからだろう。 韓代表が、尹大統領の即時職務停止を要求した背景には、大統領が戒厳令下で重要な政治家を逮捕するよう指示し、その中に韓代表も含まれているとの情報があるからだと言われる。 ただ韓代表は、そればかりでなく、尹大統領の政治では保守系が没落しかねないとの危惧を抱いていた。このため、与党全体の動きとは異なり、決議に賛成するかのような動きもみせていたようだ。 しかし、尹大統領のメッセージにあったように、尹大統領が大統領の椅子に留まっても、大統領に代わって与党が内政の主導権を握ることができる可能性が出てきたことで、与党としてまとまって弾劾案の不成立に向けて協力することにしたようである。 一方、野党「共に民主党」の李在明代表は、大統領の演説の後に会見を開き、「非常に失望した。韓国の最大のリスクは尹大統領の存在そのものだ。大統領の即時退任か弾劾による早期退陣以外に道はない」と述べた。