スウェーデンのノースボルトが経営破綻 車載用で中国製LFP電池に敗れる 野辺継男
スウェーデンの新興電池メーカーのノースボルトは11月21日、米連邦破産法11条(チャプター11)を申請した。同社は欧州で生産する自動車メーカーに電池を供給する主力企業として期待されたが、中国電池メーカーとの価格競争により、経営が急速に悪化した。負債総額は約58億ドル(約8990億円)。今回の破産法の申請により、新たに2.45億ドルの資金調達が可能となり、事業は継続する。 同社は2016年に米テスラの元幹部が立ち上げた企業で、独フォルクスワーゲン(VW)やBMWの出資を受け、欧州企業として車載用電池に対する極端なアジア依存の緩和が期待された。今回の経営破綻の原因を、「世界的な電気自動車(EV)の需要の減退」に求める声がある。だが、現実には、世界の自動車の電動化比率は上昇しており、その見方は正しくない。最大の理由は、車載用電池におけるLFP(リン酸鉄)リチウムイオン電池の普及を見誤ったことがある。 19年の段階で車載電池市場におけるLFPの世界シェアは10%以下であったが、23年は40%以上に急増した。背景としてLFPの「F」が示す鉄(Fe)に理由がある。それまで、EV用電池は、正極にニッケル・コバルト・マンガン(NCM)やニッケル・コバルト・アルミニウム(NCA)を使う三元系リチウムイオン電池が一般的だった。 これに対し、BYDやCATLなどの中国電池メーカーは、ニッケルなどの高価な金属を鉄に置き換えたLFP電池を進化させることで、電池の大幅なコストダウンに成功し、中国製EVの大幅な低価格化を実現した。 ◇潮流はLFP電池に LFP電池はエネルギー密度が低いという欠点があったが、同期間の中国内での技術競争により、高価な三元系電池と遜色ない程度まで性能が向上した。結果として、世界の多くの自動車メーカーが、特に量産車でLFP電池に切り替え始めた。ノースボルトの主たる出資者であるVWやBMWもしかりである。