YouTubeで話題沸騰の「谷桃子バレエ団」 陽キャな芸術監督と泣き虫ディレクターが二人三脚で歩んできた日を語る
■ 予想を遙かに超えていたバレエダンサーの懐事情 渡邊:谷桃子バレエ団に密着することが決まった時、バレエダンサーの給料についてはある程度話を聞いていたので、シビアだということは知識として知っていました。そこにフォーカスしたらインパクトのある動画になるだろうと思ったのは覚えています。 ただ、実際に現場に行ってみると、週5回カフェでバイトをしている人や、安いアパートでぎりぎりまで切り詰めた生活をしている人もおり、僕の予想を遥かに超えていました。 ──いざドキュメンタリー版のYouTubeの動画配信が始まると、ダンサーが誹謗中傷を受けたり、髙部さんご自身もバレエ業界の人から腫れ物のように扱われたり、というエピソードが書かれていました。 髙部:運営側からは、渡邊さんに聞かれたことには正直に話してほしいと言われていました。なので、お金のことも洗いざらい話しました。 なんでそんなことまで話すんだと感じた同業者もいたようで、人づてにそれを聞きました。打ちひしがれるまではいきませんが、残念だなと思いました。 ──渡邊さんもその頃のことを振り返って、YouTubeの方向性を心配する運営側に対して「頑張りますとしか言えず、苦しかった」と書籍の中で書いています。 渡邊:それこそ毎日のように夜、電話で2時間くらい運営側と話をしていました。 実は僕、人の話を聞くのは得意ですが、自己開示をすることが苦手です。だから、運営側から状況を聞くことはできても、自分がやっている方向性がなぜ正しいと思うのか、それをうまく説明できずに心苦しかったです。 ──当時はどういう精神状態でしたか。 渡邊:僕以上にバレエ団の人たちがつらかったと思いますが、僕もつらかったです。「つらい」と「でも、大丈夫だろう」の半々でした。 ──谷桃子バレエ団のYouTube担当を辞めるという選択肢はなかったのですか。 渡邊:辞めたいな、と思ったことはあります。でも、現場に取材に行くとエネルギーをもらうことができました。 特に、髙部先生は辛辣なコメントに対しても「そういう意見もありますよね」「そういう意見があるだけ良いじゃないですか」というように、とてもポジティブに捉えていて。それに救われたのが大きかったと今になって思います。