日本酒だけじゃない!新潟の海辺のワイナリーで砂地のワインを知る
ワイナリー「カーブドッチ」
越後線内野駅からカーブドッチへ向かう送迎バスは、平日にもかかわらずほぼ満席だった。ほどなく海辺の国道に出ると、車窓に見え隠れする日本海と砂浜に乗客は視線を奪われ、カメラを向ける人もちらほら。海を見ながらワイナリーへ向かうという稀有な旅の始まりだ。実はこの海と砂浜こそが、カーブドッチを知るキーワードなのだった。 カーブドッチは新潟市西部の西蒲(にしかん)区郊外にあるワイナリーで、創業は1992年。周辺は「新潟ワインコースト」と呼ばれ、カーブドッチを含めて5軒のワイナリーが広大なブドウ畑の中に点在している。さらに五つのレストラン&カフェ、ショップ、日帰り温泉、宿泊施設などがあり、ワイン通もワイン初心者も思い思いに過ごせる。ただし、今回の旅の予算は5000円。そこでワイナリーツアー(2200円、要予約)に参加し、カフェでランチ。あとは時間の許す限り、ブドウ畑やワイナリーを巡ることにした。 【写真】カーブドッチ内のカフェ。「コテアコテカフェ」のソーセージパレット
ワイナリーツアーは11時にスタート。スタッフがまず案内してくれたのはブドウ畑だ。現在は9ヘクタールの畑で19品種を栽培しているが、特徴的な品種は白ワイン用のアルバリーニョだ。角田(かくだ)山の麓に広がるこの土地は、砂浜から運ばれてきた砂が積もった砂丘のような場所。砂地はワイン用ブドウの栽培に適し、繊細な味わいのワインができるという。海に近く一年中西風が吹き、ブドウの木が病気にかかりにくいのも利点だ。 ワイナリーにとって最も重要なことは、その土地に合った品種を見つけること。創業者が2005年にスペイン大西洋岸の港町で出合ったアルバリーニョは、砂地でしか引き出せないジャスミンや中国茶のような香りを醸す。ヨーロッパの最果ての地と角田浜のカーブドッチの風景が、すんなりと結び付いたそうだ。一番古い畑ではカベルネ・ソーヴィニヨンが栽培されていて、収穫も終わりの時期だったが、残っていたブドウの実を口にすることができた。初めて食べたワイン用のブドウは、甘酸っぱく爽やかな風味だった。 畑を見学した後は、醸造室、樽熟成庫、セラーを巡り、ワイン造りの工程を学んだ。「ここでは年間約10万本のワインを醸造しています。華やかで軽やかながら口当たりのしっかりした、ここでしかできない味を醸すことを目指しています」とスタッフ。試飲では「私たちがほれ込んだ砂のニュアンスを感じてほしい」と、フランス語で「砂」を意味する「サブル」という名の白ワイン、赤ワインを提供。奥行きのある味わいの白、軽やかで広がりのある赤。ブドウ畑を吹き渡る潮風に吹かれているような爽快感に包まれた。