建設費が「高すぎる」…大分県・宮崎県が独自に動き、それでも「東九州新幹線」建設を推し進める「思惑」
福岡から大分、宮崎を経由して鹿児島へと至る東九州新幹線。1973年11月15日に、「建設を開始すべき新幹線鉄道の路線を定める基本計画」に追加され、50年以上の月日が流れている。しかし、未だに建設への具体的な動きはない。 【画像】 夕張市破綻から10年「衝撃のその後」若者は去り、税金は上がり… そのような状況の中、大分県と宮崎県は独自のルートを提案し、建設の機運を高めるべく動き始めた。この両県が掲げる新ルートは何を意味するのか? 前回記事【「負の遺産」から一転…!大阪万博の開催、「IRの誘致」で…人口島「夢洲」をめぐる、鉄道会社の思惑】に引き続き、12月10日に発売される、鐵坊主氏の新刊『鉄道路線に翻弄される地域社会―「あの計画」はどうなったのか?―』よりお届けする。
東九州新幹線の基本ルート
東九州新幹線の計画ルートは小倉駅で分岐し、日豊本線に沿って鹿児島中央駅へと至るもので、中津、大分、佐伯、延岡、宮崎、都城といった経由地が想定されている。 現在の整備新幹線建設においては沿線自治体による建設費用の負担、JRが求めた場合、並行在来線が分離されるが、すでに九州新幹線があり、域内における時短効果が限定的な福岡県、鹿児島県には東九州新幹線建設のメリットが見いだしづらい。 大分県や宮崎県が独自ルートの提案を始めたのは、この現状を鑑みて、より実現可能な方策を求めての動きと言ってよいだろう。
大分県が提案する久大本線ルートとは
このルートは九州新幹線の新鳥栖駅で分岐し、久大本線に沿って大分へ向かうものであり、途中駅など詳細なルートは決まっていないが、沿線最大の都市である日田や、知名度の高い温泉地である由布院などを経由するのが自然だろう。 建設事業費は日豊本線ルート案が8195億円、久大本線案は山岳部が多く、トンネル区間が多いため8339億円とやや高額になり、費用便益比においても日豊線案が1・27倍、久大線案が1・23倍と日豊本線ルートがやや優勢ではあるが、2つのルートにそこまで大きな差はない。 所要時間は博多駅までは日豊本線ルートで47分、久大本線ルートで46分と、ほとんど変わらないが、新大阪駅へは日豊本線ルートでは現行よりも50分ほど早い約3時間半、久大本線ルートでは4時間以上と、ここでは30分以上の差が開く。特に久大本線ルートでの新大阪への所要時間は現行の山陽新幹線と特急ソニック乗り継ぎの所要時間と大きく変わらない。 東九州新幹線の運行主体はJR九州となるが、博多駅から小倉駅の区間はJR西日本所有の山陽新幹線であるため、日豊本線ルートで博多駅と大分駅を結ぶ列車を運行する場合、様々な制約を受ける反面、久大本線ルートではそうした制約がないというメリットがあるといった具合に、どちらのルートも一長一短である。 こうした久大本線ルートの提案に対し、沿線の日田市では歓迎の意を示すのに対し、日豊本線ルート上の中津市は不快感を示しており、議論が2分されている。しかし、活発な議論が東九州新幹線建設促進運動の機運上昇にもつながるため、この状況は大分県にとっては好ましいものなのかもしれない。