建設費が「高すぎる」…大分県・宮崎県が独自に動き、それでも「東九州新幹線」建設を推し進める「思惑」
あまりに高額な日豊本線ルート
東九州新幹線について、宮崎県では深い議論が行われることがなかったが、2023年11月、宮崎県知事が新八代ルートを有力な選択肢として示したことで、大きく状況が変わった。 宮崎県が新幹線に対する考えを変えたのは、2023年6月、政府が公表した「骨太の方針」にて、新幹線基本計画路線の今後の方向性について調査検討を行うと記載されたことによるもので、四国を始め、各地で次の新幹線誘致活動が活発なものとなっており、宮崎県においてもその検討を本格化させる時期がきたと判断されたと考えられる。また、大分県が久大本線ルートの提案で議論を活発化させたことにより、宮崎県でも全く別のルート構想を提示することで、同様の効果を狙ったこともあるだろう。 このような県知事の意向を受け、宮崎県は2024年度予算に、東九州新幹線調査費用を計上し、元々の日豊本線ルートに加え、日豊本線ルートの部分開業と言える鹿児島中央先行ルート、そして知事が選択肢として示した新八代ルートの3つを調査する方針が決定された。 日豊本線ルート及びその部分開業にあたる鹿児島中央先行ルートは、2016年3月の調査結果にて事業費の試算や時短効果が示されており、事業費は小倉駅が位置する北九州市から鹿児島市へのルートで総額2兆6730億円。大分駅から宮崎駅の区間で1兆1840億円、宮崎駅から鹿児島中央駅の区間が7110億円とされているが、8年前の調査結果であり、近年のインフレなどを考慮すると相当上振れしていると思われる。 時短効果は大分駅から宮崎駅で現行約3時間20分が約50分に、宮崎駅から鹿児島中央駅が現行の約2時間10分から約30分にそれぞれ短縮されるとしている。博多駅を起点と考えた場合、日豊本線ルート、小倉駅、大分駅経由で宮崎駅まで約1時間40分。鹿児島中央駅経由だと最速のみずほでも1時間55分程度と見込まれる。 新たに検討される新八代ルートは九州新幹線新八代駅で分岐し、宮崎市へ向かうというルートであり、現在運行されている高速バス「B&Sみやざき」のルートに近いものと考えればよいだろう。まだ構想段階であるため、詳細なルートは未定だが、人吉市、えびの市や小林市辺りを経由すると考えるのが妥当だろう。 新八代ルートを人吉、小林経由として大まかな線を引くと約130km。同じように山間部を通る久大本線ルートの調査結果を元に大まかな事業費を試算すると、9000億円から1兆円と試算された。日豊本線ルートに比べれば、やや安価ではあるが、それでもかなり大きな事業費である。 仮に新八代ルートで新幹線が建設された場合、博多駅から宮崎駅の所要時間は1時間30分ほどと想定され、3つのルートの中で最も時短効果が大きい。ただし、久大本線ルートと同様、新大阪駅へ向かうと、かなり大回りになってしまうため、日豊本線ルートでは新大阪駅から宮崎駅が約3時間半、新八代ルートでは約4時間と30分の差が生じる。 また、宮崎へのルートの場合、航空機との競合も検討材料である。福岡空港から宮崎空港のフライトは所要時間45分であり、市街地に近い福岡空港と、鉄道とバス双方でアクセス可能な宮崎空港を発着地と考えると、新幹線の1時間30分という所要時間は航空機と五分五分といったところで、対大阪となると航空機が若干有利となる。 このように、大分県、宮崎県ともに新ルートを提案し、東九州新幹線建設の機運を高めるべく奮闘中である。ただ、どのルートにせよ福岡県や鹿児島県の賛同が必要であり、宮崎県が提案する新八代ルートでは、東九州新幹線には全く関係のない熊本県の協力が必要となる。こうした他県の協力を得るため、大分県と宮崎県には九州全体の利益につなげる活動が必要となってくる。 つづきを読む【いつまでも続くのか…?急激な発展を遂げた「新横浜駅」、その躍進の裏に「深刻な問題」があった…!】
鐵坊主(鉄道解説系YouTuber)