南シナを意識?「衝突せず対抗せず」中国がトランプ氏に送った祝電
ドナルド・トランプ氏の米大統領選での勝利は世界各国にも衝撃を与えています。トランプ氏はこれまで、隣国のメキシコをはじめ、過激派組織「イスラム国」(IS)からアジアでは日本まで、さまざまな国や組織について過激な発言を繰り返してきました。そして中国に関しても、同国からの輸入品に高率関税を課すなどと発言しています。一方で、孤立主義を匂わせる発言から、中国にとっては悪くない結果なのではとの見方もあります。中国は「トランプ大統領」をどのように見ているのか。中国政治に詳しい元外交官の美根慶樹氏に寄稿してもらいました。 【写真】「在日米軍撤退」「核保有容認」示唆 トランプ氏発言をどう受け止めるか?
トランプ勝利の報道は控えめな中国
米大統領選では大方の予想を裏切ってトランプ候補が勝利を収めました。同候補は破天荒で、暴言をも口にしてきた人物であり、母体の共和党内部からも強く批判されていました。政治には全く関与したことがなく新政権の政策がどうなるか。これまでのトランプ氏の発言をそのまま政策にすると世界中で混乱が起きます。実際には新政権はどういう政策を打ち出すか、分からないことが多すぎます。これは日本に限らず、おそらく世界中のすべての国が多かれ少なかれ感じていることでしょう。 中国の習近平国家主席は、選挙後いち早くトランプ氏に送った祝電の中で、中国が大国であることをアピールしつつ、「中米両国が衝突・対抗せず、協力してともに利益を得る原則を堅持し、建設的なやり方で相違を処理したい」と述べました。一国の元首となる人への祝電で「協力していきましょう」というのはよく言うことですが、「衝突・対抗しないで」というのは珍しい文言です。わざわざこの言葉を使ったのは、南シナ海や東シナ海の問題で両国が対立していることを意識したからです。 中国の新聞報道では、今回の大統領選の結果に中国としても大いに驚き、また米国で起こっている変化を理解しようと努めていることがうかがわれますが、総じて、中国の報道ぶりは日本などと比較して控えめです。それはトランプ政権に対して中国としてどのような姿勢で臨むか、まだ検討中のためだと思われます。中国の新聞は中国共産党と政府によって強く統制されており、まだ統一方針が出ていないのでしょう。