深夜の学生20万人サイクリングに“動乱”の兆しを見る中国当局の事情 安藤大介・編集部
◇関係改善模索の動き さらに今、中国を身構えさせているのは、トランプ米次期政権の存在だ。第1次政権時にも保護主義策を展開したトランプ氏は、次期政権で最大60%の関税引き上げを行うと公言し、就任前から圧力を強める。 人事でも対中強硬姿勢を隠さない。商務長官に指名した実業家のハワード・ラトニック氏は、関税引き上げを支持し、製造業の国内回帰を訴えている。国務長官指名を表明したマルコ・ルビオ上院議員ら、外交面でも強硬派がそろう。 一方の中国は、トランプ第1次政権が発足した17年と比べると、経済の落ち込みが顕著だ。消費がしぼみ、内需が縮小した分を外需に頼ろうと、輸出拡大を目指していたところに、関税引き上げでブレーキをかけられるのは痛い。さらに、国内では社会不安が高まり、凶悪犯罪も頻発する中で、米国と衝突したくないというのが本音だ。 米中関係に詳しい柯隆・東京財団政策研究所主席研究員は「北京(中国政府)は戦々恐々としているはずだ。指導者である習主席も強く出られず、トランプ政権との関係をどう改善するか模索している」と指摘する。 ◇関係改善へトランプ次期政権にメッセージ 関係改善を探る動きの一つと柯氏が見るのが、24年11月に米国家安全保障会議が「中国で拘束された米国人3人が解放された」と発表したことだ。米国で拘束されていた中国人受刑者3人との交換で米中政府が合意した。 柯氏は「これはトランプ次期政権に対するある種のメッセージだ。『柔軟にやる用意がある』ということだ」と解説する。 さらに、柯氏は習主席の最近の様子から、対日関係の変化への期待を感じ取る。ペルーの首都リマで24年11月に開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)で日中首脳会談に臨んだが、会談前に石破茂首相と握手する時に笑顔を見せた。「人に頭を下げるのが苦手な習主席がほほ笑むのは、彼にとっては屈辱だろう。あの笑顔は、石破首相に向けたものではなく、『中国に安心して投資してほしい』と日本の財界に呼びかけるものだった」と分析する。