深夜の学生20万人サイクリングに“動乱”の兆しを見る中国当局の事情 安藤大介・編集部
社会の閉塞(へいそく)感が強まる中、共産党の一党独裁と習近平政権の強権政治を正当化してきた経済成長も怪しくなってきた。中国政府は24年通年の成長率目標を「5%前後」としているが、同年7~9月期の国内総生産(GDP)は、物価変動の影響を除いた実質で前年同期比4.6%増にとどまった。 低迷の主因は、これまで経済成長を支えてきた不動産市場の長引く停滞だ。開発過剰や需要不足、不動産デベロッパーの経営問題は深刻化している。 「不動産は上昇するもの」。こうした前提で家計を考え、資産を形成し、ローンを組んできた中国国民にとって、価格下落は消費者マインドに冷や水を浴びる形となった。消費意欲は戻らず、深刻な需要不足につながっている。 ◇不動産低迷が地方政府も直撃 不動産価格の下落は、不動産収入に大きく依存してきた地方政府も直撃した。地方債務は膨張し、公共サービスの提供やインフラ整備にも支障が生じている。 中国経済の政府発表を巡り、最近注目を集めているのは、中国当局が発表してきた経済成長率の公式発表が、そもそも実態を誇張しているのではとの疑いだ。以前から中国の統計発表について「実勢より良すぎる」と疑問視する声は少なくなかった。だが、中国の著名なエコノミストがこうした内容を認める発言をしたため、騒ぎとなっている。 ◇実際の経済成長率は平均2%程度 「公式の数値が5%に近いとしても、実際は過去2~3年で平均2%程度になるのではないか」。米ブルームバーグは、これまで中国の規制当局にも助言をしてきたSDIC証券のチーフエコノミスト、高善文氏の発言を伝えた。12月に米経済研究所がワシントンDCで開いた催しで、中国の公式データが誇張した数字である可能性を指摘したという。 前出の興梠教授は「高氏は有名な体制側の人で、中国内部のことをよく分かっている。経済の実態が相当悪いことを示している」と語る。高氏の発言通りに受け止めると、そもそもの中国経済についての前提は大きく崩れる。そして、これは中国の「内憂」の厳しさを示す証拠となる。