40代シングル、親孝行から始まった冷凍保存食作り。深夜に大量のおかずを作り、分量を計って冷凍!気づけば料理がストレス解消に
世間から「大丈夫?」と思われがちな生涯独身、フリーランス、40代の小林久乃さんが綴る“雑”で“脱力”系のゆるーいエッセイ。「人生、少しでもサボりたい」と常々考える小林さんの体験談の数々は、読んでいるうちに心も気持ちも軽くなるかもしれません。第26回は「とにかく凍らせれば何とかなる」です。 【写真】実家に送る冷凍便。段ボールにプチプチで包装して送るのが一番いい * * * * * * * ◆きっかけは親孝行 食事は数ある家事の中でも一番厄介だ。独身の身分でも毎度作って、食べて、片付けるのは面倒なのにこれを家族の人数分、日々こなしている人には頭が下がる。ただ食べなくては生きていけないし、毎日外食とウーバーイーツというのも気が引けてしまうし、経済的に成立しない。 このひとりごちた悩みを解消してくれたのが、冷凍保存食をまとめて作る作戦だった。 きっかけは2019年に親族の葬式で急遽、帰省したこと。実家への手土産を選ぶ暇もなかったので、当時は何も考えずに冷凍保存していたカレールーと、シチューを持参した。この2品はただ作りすぎたものを冷凍しただけだ。それを土産にする偽装親孝行も、今さらながらどうかと思う。 ただ実家の母は大層喜んだ。 「ジンジャーがいっぱい入っているカレーなの? なかなかお父さんが食べないから作れなくて。そういうのが一番美味しいよね!」 え? こんなに喜んでくれるの? それなら正月の帰省時にあくせく働いて作っている料理ももっと褒めてほしい。そんな子どもじみたことも思いつつ、時々、冷凍便で送るのもいいのかもしれない。これが冷凍保存食作りの開幕となった。
◆気づけばストレス解消に 家事の種類には得手不得手がある。私は洋裁の才能はゼロでボタンつけもできないし、DIYも苦手だ。いずれもクリーニングのボタンつけサービスなど、業者さんにお願いして生活をしている。 対するように私は料理が苦痛ではなく、作ることに没頭できるタイプ。ただ単身の料理はどうしても食材が余ってしまう。うまく使いきれずに廃棄処分……ということもあったけれど、冷凍すればそのほとんどは解決できるということに、母の歓喜で気づくことができた。 ではどんなふうに冷凍プロジェクトを進めたのかというと、まずは出版に関わっている者らしくレシピ本を購入。『冷凍お届けごはん 離れている家族に』(講談社刊)、『親が喜ぶごはんを冷凍で作りましょう』(主婦の友社)を買った。じゃがいも、こんにゃくは冷凍できないということくらいは知っているけれど、そのほかのアイデアは専門家を頼ったほうがいい。 (このメニューも冷凍していいの?) と、読むたびに知らなかった情報が入ってくる。 作り始めて分かったのは、自分にとって調理がストレス解消になること。その昔、医師の西川史子さんがストレス過多で「唐揚げは離婚前、ずっと揚げていた」と打ち明けていたことがある。それによく似ていて、深夜に大量のおかずを作り、分量を計って冷凍保存袋に入れて……と作業をしているとスカッとする。大量の野菜を刻んでいると、時間が経つのも忘れている。 (あ~、なぜ痩せない、私!) (仕事もなかなか思い通りにはならないもので……) そんな私のストレスがふんだんに投入された冷凍保存食。食べるのは肉親と自分なのだから許してほしいし、食事の支度が楽になるのだから理にかなっているのだ。ちなみにとある冷凍便のメニューを公開すると…… ・イクラの醤油漬け ・アスパラの肉巻き ・肉入りきんぴらごぼう ・高野豆腐の煮物 ・(ドリアセット)にんじんピラフ、ホワイトソース、チーズ ・小エビと生姜の炊き込みごはん ・きのことサバの炊き込みごはん ・ミートソースペンネ ・味噌仕立てのかぶのポタージュ ・かぶの葉ふりかけ ・冷凍サンマ ざっとこのようなメニューになる。これを1週間くらいかけてコツコツと作り、不定期で実家に送っている。大量に作ることによって、冷凍テクニックも着々とアップ。普通の料理と違って、最終的に凍らせるという工程も加わるので、化学実験を毎回繰り返している気分だ。