『極悪女王』を観て興味、作家・雨宮処凛が女子プロレスを初観戦「え、こんなに可愛いの?」
私は混乱を抑え切れないでいた
訪れたのは11月10日、両国KFCホールで開催された「東京女子プロレス」の「世界を見渡すけど日本ってやっぱりすごくない!?」と題された試合。 女子プロにどんな団体があるか、どこがどういう系統なのかさっぱりわからないものの、チケットを取ってくれた編集・Aさんによると、「東京女子プロレス」はアイドル性の高い団体とのこと。また、この日は多くの選手が試合のため渡米しているということで、「日本の女子プロレス」がワールドワイドな活躍をしていることなどまったく知らなかった私は驚かされた。 ということで予習のため、試合情報が書かれたサイトを見ると、この日は「らく」をキャプテンとする「らくはん号」と、「原宿ぽむ」をキャプテンとする「ぽむちゃん軍団」に分かれてのチーム対抗戦とのこと。 「らく」も「ぽむ」もどんな選手だか想像もつかないが、対抗戦ということは頭にインプット。 そんな説明のすぐに下には、「協賛」についての記述が。 「今大会は山田水産株式会社の協賛となります。山田水産の主力商品である鰻の蒲焼き『山田のうなぎ』は24時間365日、鰻と向き合う『鰻師』たちが『無農養鰻』にこだわり抜き、鹿児島の清らかな地下水で鰻を丹精込めて育て上げ、最後は『焼師』たちが4度の丁寧な焼き上げで、専門店の職人技を再現しています。勝利者チームには、山田水産株式会社より勝利者賞として愛情品質の『山田のうなぎ』(鰻の蒲焼)10kgが贈呈されます」 長々と引用したが、これが「当日券情報」より上に掲載されているのだ。なんか、協賛の存在感が大きすぎないか? 少なくとも私の界隈(ヴィジュアル系)では食品、しかもうなぎを贈呈なんて、世界観的にもありえないことである。「ベルサイユのばら」な世界と「◯◯水産」は決して交わってはいけないのだ。 驚きつつも、「今日の試合は鰻を賭けて行われる」という事実がここまであからさまになっていることに、ある種の清々しささえ覚えたのだった。 そうして開演時間の午後12時半を少し過ぎた頃、司会の女性が登場し、試合の始まりだ。 と思ったらまさかのショータイム。 アイドル風の衣装を着た女の子3人がリングに登場。(※渡辺未詩は米シアトル大会出場のため欠場) 「アップアップガールズ(プロレス)」と名乗った彼女たちは「曲はベイビーフェイスです」と言うと、くるくると歌い踊り始めたのだった。 客席から上がる、メンバーを呼ぶ声。 私は混乱を抑え切れないでいた。 なぜ、これからプロレスを始めようというのにアイドルが歌って踊る? 関係なくない? そう思ったものの、同行したAさんによると、「東京女子プロレス」では当たり前の光景らしい。しかも、リングで踊る、アイドルにしか見えない3人はみんなレスラーだというからブッたまげた。本当に、アイドルグループにいても何の違和感もないほどキラキラしている。それなのにプロレスまでするなんて。そんな細くて小さな身体で、本当に? さて、曲が終わり、とうとう試合の始まりだ。 誰がどういう名前でどっちのチームとか全然わからないけど、アイドル顔負けの選手たちは、リングの上でガチで戦う。その様子に、まずは度肝を抜かれた。 さっきはヒラヒラ舞い踊ってたのに、この人たち、本当にむちゃくちゃ練習してレスラーとしてこの場に挑んでいる。当たり前だが、どの選手もヴィジュアルが私の思う「レスラー像」からかけ離れているため、脳の処理が追いつかないのだ。 そうして気づけば、手に汗握り、前のめりになっていた。 【後編】作家・雨宮処凛が女子プロレスを初観戦、“バンギャ”的にも刺激「拝みたいような気持ちになった」は下の関連記事からご覧ください。
ENTAME next編集部