株式市場における「炭鉱のカナリア」とは?投資家が見逃せない暴落危機のサイン
6. 株式市場内部の「バリュエーション」や「相対的強弱」
・PERやPBR、配当利回りなどバリュエーション指標 株式市場が加熱し、PER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)といったバリュエーション指標が歴史的水準を超えて高騰している場合、市場は楽観過剰な状態にあるかもしれません。このような過熱相場は、ちょっとした悪材料で一気に冷え込むことが多いです。バリュエーションがあまりにもかけ離れているとき、その高さ自体が「カナリア」となって警告している可能性があります。 ・市場参加者のセンチメント変化 市場では、恐怖と欲望が価格形成を左右します。「VIX指数(恐怖指数)」などの投資家心理指標が極端に低いときは、投資家が「何も怖くない」という慢心状態にあるかもしれません。 こうした「平穏すぎる」状態は、逆に言えば小さな不安材料が発生したときに過剰反応するリスクを孕んでいます。恐怖指数が上昇に転じたとき、それは「平穏から恐怖への移行」のサインとなり、相場下落の予兆となり得ます。
7. 過去の代表的な例:ITバブル崩壊とリーマンショック
・2000年代初頭のITバブル崩壊 1990年代後半のITバブル期、ハイテク株はPER数百倍という今では考えられない水準まで買われていました。投資家は「インターネットで全てが変わる」と盲信し、従来のバリュエーション指標が無視されていたのです。 しかし、やがて業績未達、需要減速、資金繰り悪化を示すスタートアップ企業が増え始め、投資家心理が微妙に揺らぎ始めました。 ハイイールド債市場や新興のIT企業の破綻ニュースなど、小さな「カナリア」が次々と警告音を発していたにも関わらず、多くの人はこれを見過ごしました。その結果、ドットコム・バブルの崩壊へとつながり、株価は長期低迷期に突入しました。 ・2008年のリーマンショック前夜 リーマンショックを前に、米国住宅ローン(サブプライムローン)関連のデフォルト率が上昇し始めたとき、市場では既にジャンク債価格が下落基調に入っていました。さらに金融セクター株が軒並み不安定になり、個別の銀行破綻やファンド清算のニュースが相次いだことで、あちこちで「カナリア」が鳴いていたのです。 しかし「今回は大丈夫だ」とする楽観論が依然として残り、多くの投資家は重大性を把握し切れませんでした。その後、リーマン破綻が引き金となり世界規模での株式暴落が起きたことは周知の通りです。