「1年経つのが早い」と感じる人は要注意…時間術を妄信する人が気づいていない致命的な"落とし穴"
■Step5 価値観に沿って人生をデザインする 時間を忘れるほど没頭できる仕事をする 本当の価値観を見出すことができたら、後は日常生活の中で、「自分のやりたい行動」として実践してみましょう。ただし、焦ることはありません。徐々に実行に移せばいいのです。突然、価値観と行動が結びつくこともあります。自分の価値観を仕事やプライベートに生かせれば、有意義な人生を送れます。 会社や官庁などの組織に属している場合、自分の価値観とストレートに合致した仕事ばかりできるわけではないでしょう。とはいえ、組織から与えられた仕事の中で、「これは好きだな」「自分は得意だな」といった具合に、自分なりに価値観にフィットする仕事を見つけて、一つ一つ増やしていくといいでしょう。 自分の好きな、価値観に合った仕事に取り組んでいるときは、いわゆる「ゾーンに入った感覚」を得られるでしょう。仕事に集中しているのですが、締め切りなどに追われて、交感神経が興奮している状態とは違って、リラックスしていて、主客が同化した「没頭している状態」です。 仕事が楽しくて、気がついたら、「時間が過ぎるのを忘れていた」といった感覚といってもいいでしょう。仕事では、そうしたゾーンに入るのが理想。私は「自己一致」と呼んでいますが、自分の感情も、行動も自然体で、必然的に生産性が最も高くなります。結果を出せるので、周囲からも評価されるという、言うことなしの状態に至るわけです。 ゾーンに入ると生産性が8倍に高まる ゾーンに入りやすいかどうかは、個人差があるのですが、認知行動療法のトレーニングによって、ゾーンへの没入を促すことは可能です。「自分はこうしたいが、できないだろう」「どうせ駄目だろう」といった脳内の「自動思考」が、ゾーンへの没入を妨げる不安要素になるのですが、訓練を重ねるうちに、脳内での不安要素がなくなって、仕事の能率も飛躍的に向上することがあります。 実際に、私が指導したあるライターさんは、「発注者にクレームをつけられたらどうしよう」「誤字脱字があったらどうしよう」といった心配事に脳内を占拠され、生産性が著しく落ちていて、1本の記事を書くのに8時間かかっていたのが、不安要素を取り除いたら、たった1時間で書けるようになったそうです。つまり、生産性が8倍に跳ね上がったわけです。 人生における時間の浪費をなくして、自分の本当の価値観に適った仕事に取り組めば、どんな時間術でも実現できないような、革命的な生産性アップも夢ではありません。皆さんも、ぜひトライしてみてください。 ※本稿は、雑誌『プレジデント』(2024年11月15日号)の一部を再編集したものです。 ---------- 佐藤 舞(さとう・まい) デルタクリエイト代表・桜花学園大学客員教授 デルタクリエイト代表。数学アレルギーから学生時代より文系の道に進むが、国立福島大学経済経営学類に入学後、統計学と出会い数学アレルギーを克服する。在学中、野村総合研究所主催の「マーケティング分析コンテスト」入賞。卒業後、一般企業に就職。その後、26歳で独立、データ分析・統計解析事業を始める。データの活用を通して意思決定コストを削減し、組織力をあげることを得意とする。総務省からの依頼でもセミナーを開催し、参加者の満足度の高さから依頼のリピート率が100%になっている(2022年2月時点)。YouTubeチャンネル「謎解き統計学|サトマイ」を運営。チャンネル登録者数は約39.7万人(2024年9月時点)。統計学やマーケティングリサーチを元にした時事ネタの解説が人気を博している。2024年2月20日より桜花学園大学客員教授に就任。 ----------
デルタクリエイト代表・桜花学園大学客員教授 佐藤 舞 構成=野澤正毅 図版作成=大橋昭一