「1年経つのが早い」と感じる人は要注意…時間術を妄信する人が気づいていない致命的な"落とし穴"
■Step2 遠回りする人生をやめよう 傷つきたくないから回避行動を正当化する いまの世の中を見渡しても、実は老若男女を問わず、「アベコベ」の間違った生き方で、無為な時間を過ごしている人が大勢います。 例えば、お金は本来、豊かな生活を送るための「手段」のはずですが、「お金を稼ぐ」のが「目的」と化しているビジネスパーソンもいます。本末転倒だと、私は思います。ガムシャラに働いて、お金を貯めたのはいいのですが、過労やストレスで体を壊し、「せっかくのお金が医療費で消えてしまった」というケースもままあります。それでは、何のために働いて、お金を貯めたのかわかりません。働いた時間も、浪費になってしまいます。 「恋人募集中」という人が、異性との出会いを求めるのではなく、ジムでウエートトレーニングに励んだり、貯蓄や投資に勤しんだり、美容やファッションにこだわったりするケースがよくあります。自信がなく、異性にフラれるのが怖いので、「筋骨隆々で金持ちの男なら、モテるだろう」「おしゃれできれいな女性なら、男性からチヤホヤされるかも」といった妄想に逃げ込んで、現実から目を背けているだけです。意味のない人生の遠回りといえるでしょう。 恋人に何を求めるのかなんて、人それぞれ。マッチョな男性ではなく、細身の男性が好みの女性だって中にはいます。男性なら、好きな女性に、まずストレートに告白すべきでしょう。「付き合うのは、もっとマッチョな人がいいの」と断られたら、そこで体を鍛え直してもう一回、アタックすればいいわけです。そのほうが「人生の近道」といえるでしょう。 本心では、「違う仕事をしたい」と思っていても、失敗して自分が傷つきたくないから、転職に踏み出せない人も少なくありません。「人気があって、就職の競争率が高い会社だから、応募してもどうせ無理だろう」「いまの仕事に慣れているし、職場にも優しい人が多いから……」などと自分に言い訳してブレーキをかけ、回避行動を正当化してしまうのです。チャンスを逃して、一生後悔するかもしれないのに、そうして自分を騙し続けるのです。 幸福度の低い人が時間も浪費するワケ では、現実を直視して、人生を遠回りしないようにするにはどうすればいいのでしょうか。それには、人生の目的を見極めることが肝心。人生の優先順位を決めるため、自分の価値観を棚卸しして、「絶対に譲れない、犠牲にできないもの」を明確にするのです。 最近では、「ミッドライフ・クライシス」が注目されるようになりました。これは40代になると、幸福度がガクッと下がる現象。たいていの場合、仕事のキャリアや子育てなどが一段落し、人生を振り返る余裕が生まれる時期に、「これまでの自分の生き方は正しかったのだろうか?」と、不安や葛藤を抱えるのが原因です。 現在の中高年は、「有名大学を卒業し、待遇のいい大企業に就職するのが勝ち組」「高級な外国車を乗り回し、ハイブランドに身を包むのが成功者の証し」「結婚して、マイホームを建てたら一人前」といった、紋切り型の価値観を刷り込まれ、「ブランド志向」が強い傾向にあります。 ところが、日本企業の国際競争力低下、終身雇用制の崩壊や非正規雇用の拡大、女性の社会進出や非婚者の急増など、社会環境が激変している中、既存の「ブランド価値」が揺らぎ、アイデンティティを喪失しているのも、ミッドライフ・クライシスが起こりやすくなった背景でしょう。 一方で、「Z世代」を中心とした若年層も、実は、アイデンティティを喪失しやすい傾向にあるといわれています。若年層は、SNSが普及した影響で、承認欲求が強く、SNSの「いいね!」の評価に過剰反応したりします。しかし、SNSで通用している価値観は、あくまでも「大勢の他者」の価値観であって、「本人の価値観」ではありません。若者たちは、他者の価値観に知らず知らずのうちに左右され、本当の自分の価値観を見失いがちなのです。 ただし、ミッドライフ・クライシスは、「第二の思春期」とも呼ばれます。中高年が本来のアイデンティティを確認し、価値観を再構築する絶好のチャンスだと、私は考えています。たいていの人は、実は、自分の本当の価値観に気づいていません。いままで信じていたのが「お仕着せのブランド価値」だと気づいた人は、自分の価値観を見つめ直し、深掘りすることで、これからのセカンドキャリアに生かせばいいのです。 豊かな社会に生まれ育ったいまの若者は、物質的な欲望にとらわれず、精神的な価値を求める傾向が強いため、アイデンティティを取り戻しやすいとも考えられます。ミッドライフ・クライシスに直面している人も落ち込まずに、「新しい人生のきっかけになる」と、前向きにとらえてください。