モンゴル出身者が見た中国流商談の卑劣な手口 儒教国家としての認識は改める必要がある
「あなたたちは戦時中にわが国を侵略したじゃないか!」 日本の社長はびっくりして、「すみません」と謝った。「反省してないのか!」とまくしたてる書記の勢いに、日本の社長はついに泣き出してしまった。 私は通訳しながらだんだん腹が立ってきた。ビジネスの話に、戦時中の話を持ち出すのは卑劣だと思ったからだ。涙を流すほど人のいい日本の社長が気の毒でならなかった。 結局、日本の社長は折れて本社に連絡し、大量のレンガを大至急、船で送るように手配した。早期の工場建設が共産党からの至上課題だった。
レンガは2週間ほどで天津港に着き、さらに1週間かけてチベット高原の一部である青海省に列車で運ばれてきた。 ところが翌日、中国側が「レンガが割れている」とクレームを入れた。「そんなはずはない」とみんなで見にいくと、前日は何ごともなかったレンガが割れていた。 彼らは損害賠償を含めてもっと大量のレンガを送るように要望した。日本の社長が拒めば、また戦時中の話を持ち出すに決まっている。私が日本の社長に「レンガを壊したのは彼らでしょう」と話すと、彼は「原因を追及したところで、どうしようもない」とあきらめていた。
中国側は工場建設を急ぐ一方で、日本企業から大量のレンガをせしめようと考えたのだろう。やっていることが矛盾だらけだった。結局、日本から再び大量のレンガが運び込まれた。 ガラスを溶かす窯を設置すると、日本の技術者は「窯が馴染むまで数日かかる」と説明したが、レンガが届けば翌日にはガラスができると考えていた中国側は「早くしろ」と急き立てた。技術の話や理屈が通じる気配はない。大学を出たばかりの私から見ても、中国側はことあるごとに無理難題をふっかけていた。
■観光のあいだに技術資料を盗み出す 中国側が日本企業の技術を盗もうとしたこともある。私が日曜日に宿泊先で休んでいると、数人の警官に囲まれた。自分たちは青海省の国家安全部の者だと名乗り、次のように語りだした。 「日本人が技術を提供しないから、われわれは彼らから奪うことにした。そこで、君に協力してほしいことがある。次の休日に彼らを青海湖へ案内してくれ。泊まりがけで観光しているうちに、われわれは彼らの金庫から技術資料を盗み出して写しを取る」