2015年の日本政治 ─ 展望と課題 ─ 内山融・東京大学大学院教授
本年の日本政治でまず注目すべきなのは、1月18日に予定されている民主党の代表選である。岡田克也代表代行、細野豪志元幹事長、長妻昭元厚生労働相が主要候補となる見通しであるが(2014年12月30日時点)、争点は、同党再建の路線と政策の基本的方向性になるであろう。岡田氏は、民主党単独で再建を目指す自主再建路線を強調している。一方細野氏は、少なくとも代表選出馬表明以前までは、維新の党など他党との合併も視野に入れた野党再編路線を主張していた(もっとも同氏は、出馬表明後は野党再編論を封印しているようである)。また、岡田氏と細野氏は党内で保守派に位置づけられるが、長妻氏は党内リベラル派の代表として出馬している。誰が代表に就任するかによって、党の基本政策の方向性や野党再編のあり方が大きく影響を受けることは間違いないだろう。他方、橋下徹氏が共同代表から退いた維新の党が他党に対してどのようなスタンスをとるようになるのかも注目される。いずれにせよ野党陣営の動向には目が離せない。 より広い観点からいえば、本年の日本政治の課題といえるのは、政党のガバナンスの在り方であろう。これまで日本の政党は、幾つかの例外を除いて一般にガバナンスが脆弱であった。党本部に対する候補者個人の自律性が比較的に高く、同一政党内に多様な政策志向を持つ議員が存在するために、政策路線に関する党内合意を形成するのが容易でない上、しばしば議員の離党や分党が生じてきた(2012年の消費税引き上げ決定に伴う民主党の分裂は、その典型的な例である)。 こうした政党のガバナンスの脆弱さが、この20年間日本政治が流動化していたことの背景にあった。新党の結成や消滅、議員の政党間移動が頻繁に繰り返されたため、政党システムが安定してこなかった。党首の方針について党内の合意が固められず、党首のリーダーシップが制約されることも多かった。さらに、昨年末の総選挙で与党陣営が勝利した原因の一つは、野党陣営が与党に対抗するための政策代案を統合的な形で提示できなかったことにあると考えられるが、ここにも野党各党のガバナンスの脆弱さが関連していたとみることができる(拙稿「2014年の日本政治を振り返る ─総選挙を中心に─」参照)。