2015年の日本政治 ─ 展望と課題 ─ 内山融・東京大学大学院教授
政党のガバナンスというこの問題は、以前から一定の関心を集めていたものであるが、自民党「一強」体制を前にした野党各党の対応が問われる本年、いっそう現実的な重要性を帯びてくるはずである。野党各党がガバナンスの問題に適切に対処することが、自民党に対する確かな選択肢を国民に提示する上で肝要となる。一政党への合併・吸収という形を必ずしもとらなくても、選挙に際して統一政策を掲げる連合体を形成する方式でもよいだろう。いずれにせよ、政党のガバナンスの強化が日本政治の安定と発展にとっての課題といえる。 なお、ここでいうガバナンスとは、党首の鶴の一声に他のメンバーが唯々諾々として従うということではない。政党のメンバーが議論と熟議を重ねて合意を形成した上で、その方針の下に結束して行動するというイメージの方が適当であろう。また、新党が結成される場合、党首の個性に依存したものになることが多い。個人党的な性格を脱し、確固とした支持基盤や党組織を発展させることが新党の生き残りには必須である。
さて、今年注目すべきイベントとしては、4月の統一地方選もある。この統一地方選の成り行きについて示唆を与えるのは、先駆けて1月11日に行われる佐賀県知事選である。官邸と自民党本部の主導で自公推薦を受けた候補に対し、農協を中心とした地元勢力が擁立した保守系候補が対抗する図式となっている。こうした保守分裂が起こった背景としては、「新しい自民党政治」と「従来の自民党政治」の相克があるようだ。すなわち、農協など各種団体から支持を受ける一方で見返りに利益分配を行うのが旧来の自民党政治である一方、小泉・安倍両首相に代表されるように、官邸主導のトップダウンで新自由主義的な改革を進めるのが新しい自民党政治の在り方である。 佐賀知事選はこのような対立図式が如実に表れた事例と見ることができるが、同様の図式が4月の統一地方選でも繰り返される可能性がある。すなわち、官邸・党本部主導で政権の路線を推進すべく擁立される与党系候補と、中央の方針とは必ずしもそぐわない地方の利益や意見を重視する保守系候補との分裂選挙となるところが出てくるのではないか。官邸主導の「新しい政治」の評価が問われる局面でもある。