アイス市場規模が過去最高 原材料こだわり、値上げに納得感?
アイスの市場規模が拡大している。2023年度は前年度比10%増の6082億円で過去最高となった。夏場以外にも需要が高まっていることに加え、商品の値上げが影響した。価格改定に合わせ、メーカー各社は消費者から納得感を得ようと、国産乳など原材料にこだわった商品を投入。商品力向上につなげる戦略が浸透したもようだ。 【グラフで見る】国内のアイス市場規模 日本アイスクリーム協会によると、23年度のアイスの市場規模は過去最高で、10年前比では4割増えた。各乳業メーカーは23年に、原材料や人件費など生産コストの上昇を受けアイスの価格改定をした。それでも23年度の販売数量は前年度と同水準を維持した。同協会は「各乳業メーカーの主力商品の強化に加え、国産の乳原料を使用するなど原材料にもこだわった付加価値ある商品の開発などが消費者に支持された」とする。 アイスクリーム類は原材料となる乳成分の含有量によって、「アイスクリーム」「アイスミルク」「ラクトアイス」の三つに分類される。果汁などを凍らせたものは「氷菓」とされる。アイスに含まれる成分のうち、牛乳から水分を除いた栄養成分である乳固形分が15%以上、うち乳脂肪分が8%を超えると、最もミルクのこくが感じられる「アイスクリーム」と分類される。
国産生乳で濃厚な味わい
各乳業メーカーでは原材料に国産の生乳を使用し、濃厚な味わいを売り出した「アイスクリーム」を販売する動きが目立つ。明治(東京都中央区)は北海道十勝地方で製造された乳製品だけを原材料に使用した「明治 Dear Milk」(130ミリリットル、希望小売価格216円)を売り込む。乳固形分が28%で、乳脂肪分が17%と「アイスクリーム」の成分規格を大きく上回っており、よりミルクの風味を感じられるとして人気という。24年6月までの売り上げは計画比200%を超えるなど好調に推移。同社は「乳本来の濃厚なこくを味わえる商品のニーズは高まっている」とし、国産の乳原料を使用することで「価格改定も受け入れられている」とみる。 ロッテ(東京都新宿区)は鳥取県産の生乳を100%使用した「レディーボーデン ミニカップ プレミアムミルク」(120ミリリットル、オープン価格)を販売。同社の人気商品である「レディーボーデン バニラ」からさらに乳成分の使用量を増やし、ミルクのリッチな味わいが楽しめる高単価商品として売り上げを伸ばす。 アイス市場の盛り上がりは、よりミルクの濃い風味を感じられる商品の増加が後押しした。日本アイスクリーム協会は「乳成分の含有量を増やしたり、国産の乳原料を使用したり、付加価値を付けた商品は増えている」と話す。 (廣田泉)
日本農業新聞