有村智恵が明かすプレッシャーのかかる場面でのマインドセット 心を整えるためにすることは
【大事な場面では歌う?】 ――己との戦いを克服するためには、何を意識すればよいのでしょうか。 宮里藍さん(ツアー通算14勝/USLPGA7勝ほか海外ツアー通算9勝)が、ピア(・ニールソン)とリン(・マリオット)から教わっていた、「ビジョン54」っていうカリキュラムがあるんですけど、その考え方が面白くて。「数を数えながら打ってみる」とか「歌を歌いながら打ってみる」とか、プレー中にショットのことを考えないための考え方なんです。「シンク・ボックス」と「プレー・ボックス」、つまり、考えるところ(=シンク・ボックス)と、プレーするところ(=プレー・ボックス)で線引きをしなさい、っていうのが彼女たちの理論で、ショットの(動作に入る)ちょっと前のところに、自分の頭のなかで線を引いて、ここまでは考えるけど、この先は考えない、みたいなイメージを持ちなさい、ということです。 私は、それに取り組んでから、すぐに優勝した経験もあるくらいです。もちろん、頭の中で、ですけど、スイング中やプレッシャーのかかる場面で歌を歌いながらショットをしてみたら、すごくうまくいったことがありました。結局は、スイングについては"考えない"ことが一番難しいので、考えないように、違うことに意識がいくように、いろいろと試していたことのひとつです。 ――効果の実感があったんですね。 ありました。もちろん毎回効果があったわけじゃないんですけど、調子が悪くなってきたら歌う曲を変えてみたりと、プレー・ボックスのなかでもやることを変えていくことで、自分の中でも気持ちをリセットしたり、変化させることもできました。 スランプの時や調子が悪い時は、自分のミスや、弱い部分、緊張している事実を受け入れた者勝ちだな、ということを強く実感しましたね。スランプに入ってすぐは、それまで調子がよかった分、まだこれはスランプじゃなくて、ただ何かがちょっとずれているだけだ、と思い込んでしまって。メンタル面の不調も、時間が経てば乗り越えられるって思っていて、どこかで不安な気持ちや、「これ何かおかしいな」と思っている気持ちがあっても、その気持ちにずっと蓋をしてやっていたんですね。 でも、その蓋を開けて「今、ショットを打つのも怖いし、緊張もしている」という気持ちを認めたことによって、キャディーさんにも「ここは(シチュエーションが)怖いから、逃げていいですか?」と素直に話もできるようになって、スコアメイクもできるようになってきたんです。 そこはひとつ段階が上がったな、と実感した瞬間でした。あまり自分の気持ちに蓋をしすぎずに、緊張している時にはその対策法もあるから、まずは緊張していることを「受け入れる」ことがすごく大事だなって思いました。