自民・立民、国民民主など取り合いへ 経済政策に公約取り入れも
第50回衆院選は10月27日投開票され、自民党、公明党の与党は公示前勢力(279議席)から大幅に議席を減らして過半数(233議席)を割り込んだ。野党第1党の立憲民主党は公示前の98議席から大幅に増やして148議席を獲得した。石破茂首相は野党の協力を得て政権を維持する考えを示したが、政権の新たな枠組みを巡って与野党の攻防が始まり、政局は流動化する情勢だ。国政が停滞すれば経済政策など政策全般への影響が懸念される。 自民党は政権復帰した2012年に続いて14年、17年、21年の衆院選でいずれも単独で過半数を上回る議席を獲得していた。だが、今回は公示前勢力の247議席から大きく減らして191議席にとどまった。公明も公示前の32議席から24議席へと減少。両党が目標としていた過半数の233議席を割り込んだ。自公での過半数割れは民主党政権が誕生した2009年以来15年ぶりとなる。 ●勝敗左右した「政治とカネ」 今回の衆院選は「政治とカネ」の問題を受けた政治改革や、物価高対策や賃上げなど経済政策が主な争点となった。 自民党は派閥の政治資金問題への強い批判を踏まえ、衆院解散直前に政治資金収支報告書に不記載があった前議員らを非公認にするなどの対応を取ったが、逆風は収まらなかった。選挙戦の最終盤で、自民党が非公認とした候補の党支部に活動費2000万円を支出したことが問題視され、自民党支持層や無党派層のさらなる離反を招いた形だ。 石破茂首相は28日の記者会見で、目標に掲げていた自公で過半数の維持が達成できなかったことについて「自民党は国民から極めて厳しい審判を頂戴した。今回の厳しい結果は党の改革姿勢に対する国民の厳しい叱責と受け止めている」と語った。 そのうえで「国政の停滞を避け、政治改革や経済対策などの課題に先頭になって取り組む」と述べ、自公政権の継続と自らの続投への意欲を示した。ほかの野党との連立については「今この時点で連立を想定しているわけではない」として早期の枠組み拡大に消極的な考えを表明。当面は少数与党のままで政策ごとに野党と協力する「部分連合」を念頭に、野党側の政策も取り入れていく方針を示した。 自民党関係者によると、政策で一致できる政党として国民民主党を中心に協力を呼びかける見通しだ。過半数を確保するため不記載があって非公認となり、無所属で勝ち上がった議員や、自民と立場の近い無所属議員の追加公認も検討する。 自民党では、現役の閣僚や党幹部経験者らが苦戦した選挙区が多く、牧原秀樹法相と小里泰弘農相、伊藤忠彦復興相はいずれも小選挙区で敗退し、伊藤氏は比例代表で復活当選した。牧原氏と小里氏は比例で復活できず落選した。甘利明元幹事長も落選した。 不記載があった自民党前議員のうち9人は公認を受けず無所属で出馬したが、下村博文元文部科学相、高木毅元復興相ら大物議員が落選。公認は受けたものの、比例代表との重複立候補は認められなかった候補では武田良太元総務相らベテランも敗北した。 公明党も「政治とカネ」問題への批判の影響を受けた。石井啓一代表が小選挙区で敗れて落選したほか、小選挙区で4人が立候補した大阪ではいずれも敗北するなど苦戦を強いられた。