ディスクブレーキの「フローティングディスク」ってナニ?
ロードスポーツでメジャーな「フローティングディスク」
現行のミドルクラスを超える排気量のロードスポーツ車が装備している、油圧式のディスクのフロントブレーキを見ると、ホイールのハブにボルト留めされている部分(インナーディスク)と、ブレーキキャリパーが挟み込んでいる部分(アウターディスク)が別々の部品で、それぞれを丸いピンで連結しているディスクローターが主流になっています。この構造は「フローティングディスク」と呼ばれています。 【画像】これが「フローティングディスク」です!画像をもっと見る!(10枚)
ちなみに小~中排気量車やオフロード車、また大型車でも昔のバイクは1枚モノの「ソリッドディスク」や、インナーディスクとアウターディスクは別部品ながらリベットでガッチリと固定した「リジットディスク」が主流です。 また現行の大排気量ロードスポーツ車の場合も、リアブレーキは大抵がソリッドディスクを装備しています。
アウターディスクが浮いている!?
「フローティング」(=Floating)とは「浮いている、浮動」という意味ですが、これはインナーディスクに対してアウターディスクをガッチリ固定せずに、浮いた構造になっているからです。……が、なぜ浮かせているのでしょうか? それは常にディスクブレーキの制動力と操作フィーリングを保つために、レースシーンから生まれました。
油圧式ディスクブレーキは、マスターシリンダーで発生したブレーキフルードの圧力をブレーキキャリパーに伝え、ブレーキピストンがブレーキパッドをディスクローターに押し付ける摩擦力によって制動力を発揮します。 その際に摩擦熱が発生してディスクローターはかなり温度が上昇しますが、アウターディスクは外側の方が径が大きいためブレーキパッドと擦れ合うスピードが速く、内側は径が小さいので擦れ合うスピードは遅くなります。そのため外周部の方が温度が高くなります。 すると外周部の方が大きく熱膨張し、内側は熱膨張が少ないため、ディスクローターは歪んで反り返ってしまいます。 ブレーキが冷えている時はディスクローターとブレーキパッドはほんの僅かな隙間で平行に保たれていて、ブレーキをかけるとギュッと挟み込みますが、ディスクローターが過熱してナナメに反り返ってしまうと、ブレーキパッドを押し広げてしまいます(ブレーキを離すとすぐにディスクローターは冷えて真っ直ぐに戻る)。 するとブレーキピストンが余計に押し戻されるため、次にブレーキをかけた時にディスクローターとブレーキパッドの隙間が広くなり過ぎているため、ともすればブレーキが効かない危険があります。 そこで何度かレバーを握り直す「ポンピングブレーキ」を行なえばブレーキは効きますが、これは経験に基づいた冷静な判断が必要な上に、時間的な余裕が無ければ間に合いません。 そこで考案されたのが「フローティングディスク」です。インナーディスクとアウターディスクに分割し、その間に設けたフローティングピンによって、ディスクローターの熱膨張による反り返り分を吸収するのです。こうすればディスクがブレーキパッドを押し戻すことが無く、隙間も過剰に広がらないので、次にブレーキをかけた時も同じ操作フィーリングでブレーキが効きます。