宇宙の“化学”を明らかにする遠赤外領域望遠鏡「SALTUS」を欧米研究者合同チームが提案
「ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(James Webb Space Telescope: JWST)」に続く、新たな赤外線観測用の宇宙望遠鏡の実現が求められているようです。 今日の宇宙画像 アメリカ航空宇宙局(NASA)ゴダード宇宙飛行センターをはじめとする欧米の研究機関による合同研究チームは、遠赤外線を観測するプローブクラスの宇宙望遠鏡「SALTUS(Single Aperture Large Telescope for Universe Studies)」を提案しました。
■寿命が約5年の遠赤外線用宇宙望遠鏡
SALTUSは主鏡の口径が14mに及ぶ宇宙望遠鏡で、波長34μm~230μmの光に対応する赤外線分光装置「SAFARI-Lite」と、波長56μm~660μmの光に対応する高解像度受信装置「HiRX」という、いずれも遠赤外線で観測を行うための2つの装置を搭載します。これにより、近赤外線~中赤外線に対応したウェッブ宇宙望遠鏡や、赤外線よりも波長の長い電波(サブミリ波・ミリ波)に対応した「アルマ望遠鏡(ALMA)」の観測を補完する役割を担うのだといいます。 SALTUSの運用期間は約5年で、NASAが運用していた赤外線宇宙望遠鏡「スピッツァー(Spitzer)」の約16年半(当初の予定は5年程度)や、ウェッブ宇宙望遠鏡で予定されている5~10年よりも短い設計になっています。研究チームによると、赤外線センサーに対する熱放射の影響を抑えるため、SALTUSの観測装置はウェッブ宇宙望遠鏡のものに似たサンシールド(太陽熱を遮断する2層の膜)の日陰側に置かれます。サンシールドの太陽側は310K(摂氏約37度)ですが、赤外線センサーや主鏡が取り付けられた反対側は45K(摂氏マイナス228度程度)という低い温度に維持されます。約5年という運用期間は、光学性能を満たすために膨張式の構造が採用されている主鏡の維持に必要なヘリウムガスの搭載量によって決められているようです。