プランクトン化石、低濃度の「水酸化ナトリウム」で安全安価に抽出 「フッ化水素酸」を使わない手法を九大・尾上教授が開発
人間が吸い込むと死に至る毒薬「フッ化水素酸」を使って岩石から取り出していたプランクトン「放散虫」の化石を、低濃度の「水酸化ナトリウム」で抽出する手法を、九州大学大学院の尾上哲治教授が開発した。放散虫は地球や生命の歴史を解明する上で重要な役割を果たす化石で、安全な新手法が研究進展に大きく寄与するだけでなく、教育現場での放散虫化石の抽出・観察も可能になる。 放散虫は5億年前から現在まで生息する動物プランクトンで、大きさは0.1~0.5ミリ。さまざまな種類があり、地層の時期や海の環境が分かる。死骸が海底に堆積しチャートと呼ばれる硬い岩石になる場合が多く、これまではフッ化水素酸を使って化石を取り出してきた。しかし、フッ化水素酸は取り扱いが難しい上、化石の表面が壊れる可能性も指摘されてきた。 新手法は、濃度4%の水酸化ナトリウム溶液を使う。溶液にチャートの粒を入れ、3日間80~100度の温度に保つ。溶液を取り換え同じ作業を2回繰り返すなどして放散虫を取り出す。従前に比べて安全性が高い上、化石へのダメージもない。そのため、過去の環境分析や年代判定がより正確になる。また、特定の年代のチャートにはレアメタル(希少金属)のマンガンが多量に含まれていることが分かっており、新方式は資源探査でも有効な手段となりうるという。 尾上さんは「新しい手法は安価で安全」とし「チャートはどこにでもある石なので学校でも放散虫を取り出して観察してもらえれば、地球の歴史に興味をもってもらうきっかけになる」と話す。