宇宙の“化学”を明らかにする遠赤外領域望遠鏡「SALTUS」を欧米研究者合同チームが提案
■SALTUSの観測目的
SALTUSの観測目的の1つは、宇宙が誕生してから現在に至るまでの間に銀河、重元素、星間塵がどのように生成されてきたのかを計測し、銀河と超大質量ブラックホールとが相互作用しながら進化していった様子を調査することだといいます。 星形成銀河の内部では、超新星爆発によって軽元素や金属(重元素)を含むガスが外側に向かって放出され、銀河周辺物質や銀河間物質になるものがあるといいます。こうした銀河間空間に放出されたガスは、冷却されて再び銀河に降着することによって、新たな星の形成につながるようです。そのため、銀河の内部や周辺のガスの流れを最初の銀河が登場した時代から現在までたどることで、宇宙の進化についての理解を深めることができるといいます。 また、SALTUSは原始惑星系円盤や惑星系内の水(H2O)や有機分子を追跡することで、惑星が形成される最中にハビタブル性の要件となる物質がどのように生成されるのかを確認するという目的を遂行する以外にも、幅広い応用に活用できると研究チームは述べています。 研究チームによると、SALTUSはアメリカ科学アカデミーが策定した10か年プログラム「Astro2020」でも重点化が望まれているプローブクラスの観測装置であり、宇宙バルーンを活用して星間物質を観測する「GUSTO(Galactic/Extragalactic ULDB Spectroscopic Terahertz Observatory)」、約4億5000万個の銀河を追跡する宇宙望遠鏡「SPHEREx(Spectro-Photometer for the History of the Universe, Epoch of Reionization and Ices Explorer)」、ダークエネルギーや系外惑星を調査する宇宙望遠鏡「ナンシー・グレース・ローマン」といった、他の赤外線観測装置の役割を補完することが期待されるとしています。 Source Universe Today – Astronomers Propose a 14-Meter Infrared Space Telescope Chin, G. et al. – Single Aperture Large Telescope for Universe Studies (SALTUS): Science Overview Harding, L. K. et al. – SALTUS Probe Class Space Mission: Observatory Architecture and Mission Design National Academy of Sciences – Pathways to Discovery in Astronomy and Astrophysics for the 2020s (2021)
Misato Kadono / sorae編集部