1mm単位でコンセプトを追求 アトリエ小倉染芸の考える、東京手描友禅の魅力とは?
染師の個性を自由に発揮できる 目指すは期待を超えた“粋”
ー小倉様から見て、東京手描友禅の魅力とはどういったものがあるのでしょうか? どんな表現も受け入れられる幅の広さでしょうか。 東京手描友禅は文字通り手で描くので、型通りではなく、すべてが自分次第です。 そのため「この模様は小さくしよう」、「この模様は少し凹ませよう」といった調整ができるのです。たった1mm線を内側に描くだけでも印象が変わりますし、たった一滴の染料を垂らしただけでも色味はガラリと変わります。 過去には異国の植物を描きつつ、ぼかしを加減し松に見えるようにして友禅らしさを演出したこともありました。 東京手描友禅はそういった、染師の個性が表れる点が魅力だと思っています。 そうやって個性を駆使し目指すのは、お客様や自分の期待を超えたカッコ良さ、粋を生み出すことです。ある意味「粋」の精神は、私の芯にあるものだといえるかもしれません。 図面を描くときには、羽織って、実際に着るところをイメージしながら細かく調整していく。 そうして生み出された世界に一つだけの着物は、きっと着る人の生活を良くするものになると思っています。 おしゃれな服を着て出かけたときに、うれしい気持ちで過ごせる。好きなアクセサリーをつけているから頑張れる。 海外には「良い靴は履き主を良い場所に連れていってくれる」ということわざがありますが、身につけるものには生活を良くする力があると思っています。ましてや、着物は日本代表する民族衣装ですから、その特徴はもっと強まるはずです。 こういった考えを込めて、私は自身の理念を「洋服では味わえない、特別な日常」をという言葉にまとめています。 東京手描友禅が描かれた着物を着て、良いことを感じていただきたい。ワクワクしていただきたい。そのために、着物を着られるお客様の期待を超える「粋」を表現したい。 それが私の大切にしている想いです。
一日一日の積み重ねがこれからに繋がる
ー最後にこれからについて教えてください 実はこれからについてはあえて考えないようにしているのです。反対に、一日一日を大切に過ごすことはとても大切にしていますね。 サラリーマン時代と違ってこの仕事において、毎日どのくらい働くかを決めるのは自分自身に他なりません。 だからこそ5年後、10年後の自分を決めるのは、今日の自分の頑張りだと思うのです。 毎日、一生懸命、100%、いや120%の力を出し切ること。そしてそれを積み重ねていくこと。 それこそが私の考えるこれからですね。