1mm単位でコンセプトを追求 アトリエ小倉染芸の考える、東京手描友禅の魅力とは?
吸い込まれるような細かな絵柄、深い色合い。思わず見惚れてしまうほどの品のある作品が、東京都新宿区にあるアトリエ小倉染芸の東京手描友禅の特徴だ。 東京手描友禅は、手描きであるが故にたった1mmの線にまでこだわることができるという。 今回はアトリエ小倉染芸の小倉隆さんにお話を伺い、東京手描友禅の歴史や魅力、作品に込める想いについて伺った。
洗練されていておしゃれな東京手描友禅の特徴とは?
ー東京手描友禅の歴史について教えてください。 そもそも友禅染とは京都で生まれた技法で、江戸時代の扇絵師・宮崎友禅が描く扇絵を小袖に応用したことから友禅模様が流行し、やがてその模様をあらわす染色技法を友禅染と呼ぶようになりました。 それまでは着物への装飾は絞り染めや刺繍が用いられていましたが、友禅染が開発されたことで装飾に輪郭が生まれ多くの色を使うことができるようになりました。 京都で生まれ広まった友禅染は、やがて参勤交代によって大名がお抱えの染師を江戸に連れてきたことで江戸にも浸透。1800年代にはその技術が根付いていたといいます。 また加賀友禅に関しては、宮崎友禅斎本人が金沢へ移り住んだ際、その技法を伝えたのではないかと言われています。 3つの友禅には、それぞれ特徴があります。 まず京友禅は、御所の周りで育つ季節草花を描く「御所時」という模様や松竹梅など、伝統的な絵柄が特徴的です。多くの色が使われるのも特徴のひとつですね。 加賀友禅は、植物や鳥といった、いわゆる花鳥風月を写実的に描写する特徴があります。そこにぼかしを入れ、印象的に仕上げます。 対して江戸の友禅、つまり東京手描友禅は、絵柄にこれといった特徴がなく、色に関しては、色数が少なくすっきりしたものが東京手描友禅の特徴といわれています。 これは江戸時代の後期に、幾度となく奢侈禁止令、つまり贅沢禁止令が発令されたことが理由です。それによって、着物に用いられる色数が制限され、華美なものが着られなくなりました。 そのなかで江戸の町人たちは、1色の中に柄を仕込んだり、裏地に絵柄をつけたりといった着物の楽しみ方をするようになりました。こうした楽しみ方から、洗練されておしゃれなものを「粋」と表現するようになったとされています。 とはいえ現在は京都や加賀で修行をして東京で活動している作家も多いので、一概には特徴をまとめきれません。染師の個性が出ることが、東京手描友禅のおもしろさかもしれませんね。