三笘が初選出…なぜW杯アジア最終予選11月シリーズに挑む森保JにJ王者の川崎勢が急増したのか?
今回のアジア最終予選を振り返れば9月はオマーン、10月はサウジアラビアと、ともにシリーズの初戦で敗れた。主軸を担うヨーロッパ組が前者は日本へ、後者では敵地ジッダへ集った状況で生じた、コンディションのバラつきが要因のひとつだった。 今回もベトナム政府が新型コロナウイルス禍で厳しい渡航制限を設けている。 ヨーロッパ発の国際便のほとんどが入国を認められていない状況で、所属クラブにおける今週末のリーグ戦を早めに終えた三笘や田中ら7人は一度日本へ帰国。Jクラブ勢とともに日本発の2便に分かれて、ベトナム入りする行程が組まれた。 一方で日曜日に試合がある守田ら10人はオランダに一度全員が集まった上で、JFAが手配したチャーター便でベトナムへ向かう。結果として、森保監督をして「全員がそろうのが、ベトナム戦の前々日になる」と言わしめる状況が生まれた。 「トレーニングでどれだけ強度が上げられるかはわからないが、ピッチ上でのトレーニング、全体でのミーティング、個別でのミーティングでそれぞれの役割を伝えて、与えられた時間のなかでチームとして同じ絵を持って戦えるようにしたい」 ベトナム戦へ向けた本格的なトレーニングが、9日と10日の2度だけに限られる状況へ、森保監督はこんな青写真を描いた。しかし、直近の試合からの回復具合や時差、気候の違いなどでコンディションに再び差異が生じる可能性はゼロではない。
それでも絶対条件の勝利を手にするためのヒントはオーストラリア戦にある。 アンカーに遠藤航(シュツットガルト)を、前方に守田と田中のインサイドハーフを配置した逆三角形の中盤が奏功したのは、昨シーズンの川崎で守田と田中が[4-3-3]システムで戦い、歴史的な独走で頂点に立った成功体験に拠る部分が大きい。 川崎では守田がアンカーを務めたが、それでも逆三角形の中盤に慣れていたからこそ、準備期間が2日間のぶっつけ本番でも新布陣が機能。劣勢が予想されていたオーストラリア戦の前半開始わずか8分に、田中の代表初ゴールで先制した。 いい流れとともに[4-3-3]を継続するならば、ベトナム戦でも遠藤と守田、田中のユニットがチームの中核を担う。その上で他の選手たちのコンディションに差異が生じる事態になれば、直近の2シーズンにおける川崎で培われた関係をそのまま生かすのも有効な戦い方となる。 具体的には旗手を左の、9月シリーズ以来の復帰となった山根を右のサイドバックに配置。センターバックの一角には6月シリーズ以来の復帰となった谷口を、左ウイングには三笘を起用すれば、10人のフィールドプレーヤーのうち実に6人を、昨シーズンからJ1戦線を席巻してきた王者の所属および出身選手が占める。 おりしも3日のJ1リーグ戦で、右サイドバック酒井宏樹(浦和レッズ)が右足を痛めた。メディカル同士で確認し、プレー可能と連絡を受けた上で招集したが、オーバーエイジで参戦した東京五輪を含めて、ほとんどオフを取らずにプレーし続けている33歳のキャプテン、DF吉田麻也(サンプドリア)らの蓄積疲労も考慮しなければいけない。 「日本が非常に厳しい状況に置かれていることを認識した上で、9月と10月の反省を踏まえてどのような戦い方でも選択できる、ベストのメンバーを選ばせてもらった」 フィールドプレーヤーの4人がベンチ外となる状況を理解した上で、試合に登録できる23人を上回る27人を招集した意図を森保監督はこう説明した。視線の先には9月に苦杯をなめさせられたオマーンに敵地で借りを返す、カタールワールドカップ出場権を獲得する上で絶対に完遂させなければいけないミッションもすえられている。 可能な限り多くのゴールを奪った上でベトナムに勝利し、その上でベストの陣容およびコンディションでオマーンとの年内最終戦に臨むために。川崎で育まれた最強のコンビネーションが、森保ジャパンのなかで大きな存在感を示し始めようとしている。 (文責・藤江直人/スポーツライター)