箱根駅伝Stories/苦悩の時期を経た順大・吉岡大翔 ジョグの改善で光明 「本当に感謝しかない」
取り戻しつつある本来の走り
2年目のシーズンも結果だけを見れば、思うようにいかないことが多かったかもしれない。5月の関東インカレ前には鼻水と咳が出る症状が長引き、夏場には一時体重がピークよりも4kg落ちた時期も。10月の箱根予選会は元に戻った矢先のレースとなり、その後はインフルエンザの予防接種による発熱にも見舞われた。「決められたレースの日程に合わせていけなかったことは弱さです」と反省する。 一方、練習ではより良い取り組みを模索し続けた。1年目は距離への対応やポイント練習に意識が行き過ぎ、疎かにしがちだったジョグの改善に着手。「自分の持ち味を考えると、質の良いジョグをしっかりやること。そこで走りのリズムも良くなっている実感があります」と光明を見い出した。 今では「練習はやってすぐに結果が出るものではないのはわかっていますが、実際に全員の練習を見たことがあるわけではないですが、全大学のどの選手よりも質が良いジョグをしている自信があります」と手応えを感じている。 11月9日に出場した日体大長距離競技会10000mで28分26秒75の自己新をマーク。それ以上に「記録会ですけど勝負にもこだわりました」と吉岡。レースの大半を先頭で引っ張りながら、最後もしっかり勝ち切って組トップを占め、「記録以上に思い通りの走りができた」と笑顔を見せた。 長門俊介駅伝監督も「彼の期待値からすると、まだ物足りないと評価される人もいるかもしれないけど、チームのために長い距離に取り組むなど、確実に成長はしています。このレースは浮上のきっかけにもなったと思います」と感じている。 2度目の箱根駅伝では、下級生がエントリー10人を占める若いチームにあって、主力を任される存在となる。「どの区間を走るかよりも、どういう走りをするかが大事。予選会の結果から一番順位を上げていけるのは自分たちなので、上を目指していければ」と力強い。 完全復活まではまだ道半ばかもしれない。それでも、かつての輝きは取り戻しつつある感覚はある。「長門監督をはじめ、周りの人々は悪い時でも声をかけて支えてくれました。本当に感謝しかないですね」。 チームのため、そして何より苦しい時期に支えてくれた人たちに恩返しの走りを見せるつもりだ。 よしおか・ひろと/2004年5月18日生まれ。長野県長野市出身。長野・川中島中→長野・佐久長聖高。5000m13分22秒99、10000m28分26秒75、ハーフ1時間2分25秒
田中 葵/月刊陸上競技