サブカル文脈から読み解く2010年代のアイドル、ももいろクローバーZとでんぱ組.inc
音楽評論家・田家秀樹が毎月一つのテーマを設定し毎週放送してきた「J-POP LEGEND FORUM」が10年目を迎えた2023年4月、「J-POP LEGEND CAFE」として生まれ変わりリスタート。1カ月1特集という従来のスタイルに捕らわれず自由な特集形式で表舞台だけでなく舞台裏や市井の存在までさまざまな日本の音楽界の伝説的な存在に迫る。 2024年7、8月の特集は、「サブカルとJ-POP」。802でもやらない夏休み自由研究というテーマのもと、2カ月間に渡ってサブカルと音楽の話を渡り掘り下げていく。 田家:こんばんは。FM COCOLO「J-POP LEGEND CAFE」マスター・田家秀樹です。今流れているのは中島みゆきさんの「時代」。1975年発売の2枚目のシングル、2018年の『中島みゆき ライブリクエスト -歌旅・縁会・一会-」からお聴きいただいています。先月と今月の前テーマはこの曲です。 時代 / 中島みゆき 7月と8月、2カ月に渡って「802でもやらない夏休み自由研究 それはサブカルから始まった」と題して、サブカルの話をしております。 というわけで、サブカルとJ-POP。今月は「新アイドル伝説 それはももクロから始まった」。アイドルについての4週間なんですね。先週までは90年代までのJ-POPとサブカルを辿ってみましたが、2000年代以降、じゃあJ-POPはどうなったのか。メインストリームはアイドル一色になっていくんですね。2005年にAKB48が誕生してから、空前の集団アイドルの時代が訪れました。AKB48、乃木坂46、欅坂46、日向坂46、SKE48、NMB48、STU48。いろいろなグループから派生したユニットというのもありましたね。2010年代の10年間の様々なセールスの記録や、チャートランキングは彼女たちがほとんど独占というような状態が続いておりました。彼女たちをプロデュースしていたのが、秋元康さんですね。 そういう中で違うことをやろうよ、新しいことをやろう、もっとおもしろいことがあるんじゃないかという人たちがいたわけですね。で、メディアではそういう人たちを地下アイドルと呼んだんですね。まさにサブカルです。アングラ。そうやって活動をしていた人たちも、すでに10年のキャリアがあって、メインストリームの中にもたくさん登場しております。メインストリームのアイドルとは違う音楽的な流れが定着しました。今月はそんな流れをあらためて辿ってみようと思っているのですが、と言っても私には手に負えないわけで、ゲストの方にいろいろ教えていただこうというお勉強CAFEですね。そんなサブカルのアイドルシーンを見続けてきたライター・編集者、株式会社SWの代表取締役西澤裕郎さんをお迎えしております。 西澤:よろしくお願いします。 田家:前置きが長いのはご存知でしょうけども(笑)。 西澤:この番組はずっと聴かせていただいております。 田家:この番組には西澤さんが欠かせない方でありまして、雑誌Rolling Stone JapanのWeb版に、「J-POP LEGEND FORUM」時代からアーカイブの文字起こしというのがあるんですよね。2019年9月以降のほとんどの番組が、ほとんど全部読めるんです。その文字起こしをされているのは西澤さん。 西澤:いつも勉強させていただいています。 田家:ディレクターは編集しているので全部聴いていますが、ディレクターの次に全部お聴きになっているのではないのかということで、今年の春に初めてご飯食べましょうよ、ということでお会いしたら、ずっとサブカルアイドルを見続けている。ぜひその話をしてくださいということで実現した企画で、選曲もすべてお願いしてしまいました。 西澤:先に言っておくと、僕も偏っているかと思いますので(笑)。 田家:「新アイドル伝説 それはももクロから始まった」1曲目、西澤さんから選ばれたのはこの曲です。 行くぜっ! 怪盗少女 / ももいろクローバー 田家:2010年5月発売、ももいろクローバーZのメジャー・デビューシングル「行くぜ! 怪盗少女」。作詞作曲が前山田健一さん、ヒャダインですね。 西澤:この曲がライブシーンで注目を集めて、所謂アイドルに興味がない人も現場に足を運び始めたんですね。そういう意味で象徴的な曲だなと思って選ばせていただきました。 田家:この曲はテレビではあまり歌えなかったという記事がありましたけどね。 西澤:先ほどおっしゃっていただいたようにAKB48が出てきてアイドルが一気に広まったんですけど、当時からするといわゆるアイドルっぽくない曲ではあるというか。 田家:たしかにね(笑)。 西澤:今では当然になっているんですけど、当時こういう曲を歌うアイドルはあまりいなかったので、特に地上波とか、そういうもののイメージとは違ったというのはあるんじゃないですかね。 田家:先週の最後はゆずで終わったんですけども、そのときに来週も路上で始めますという話をして、ももクロで路上で始まったんですよね。 西澤:彼女たちはスターダストという事務所所属のグループではあるんですけど、最初から潤沢な予算があるわけでもないので、まずはお金をかけずに活動していこうというところで、国立代々木競技場第一体育館の近くにある代々木公園からライブを始めたという。 田家:先週までとちゃんとそういうつながりがあると思っていただけると。いきなり何が始まったということには思われる方いらっしゃるでしょうが、ちゃんとつながっているんですよ。「それはももいろクローバーZから始まった」というタイトルは思いつきでつけたのですが、西澤さんの中でもそういう感じはありますかね。 西澤:そうですね。やっぱりももクロがいなければ、それ以降の2010年代のアイドルというのはここまで豊かにならなかったんじゃないかなと思いますね。 田家:4週間いろいろ教えてください。 西澤:僕の知っている範囲で(笑)。 田家:よろしくお願いします(笑)。 泣いてもいいんだよ / ももいろクローバーZ 田家:お聴きいただいているのは2014年に発売になりました、ももいろクローバーZの「泣いてもいいんだよ」。作詞作曲が中島みゆきさんなんですね。みゆきさんが書いたアイドルです。しかもももクロ、彼らの唯一のシングル1位がこれでしょう。 西澤:この番組でお馴染みの中島みゆきさんが楽曲を書かれているのは、先月からやられているサブカルチャーというものがここにつながってくるんだなと、僕もびっくりしました。 田家:結成時は全員が中学生か高校生だった。学校に行っていたわけですもんね。 西澤:平日は学校で動けないので、週末に活動をするということで週末ヒロインという。 田家:メンバーの選ばれ方は、スターダストって大きいプロダクションですけど、そこのそんなにエリート的な人ではなかった。 西澤:まだ全然花咲く前の子たちを集めて始めたというところで、そういう意味でも普通のアイドルの始まり方とは違うなと思って。 田家:AKB48はいろいろなプロダクションから集まったりしているわけでしょう。それに比べると、一人一人の身体能力は高い感じがありましたけどね。 西澤:もともとももクロを始めるために事務所に入ってきた子たちではないというところでいうと、それがまたちょっと特殊なんだと思うんですよね。 田家:路上ライブから始まった下積み時代があるわけで、そんな話は曲の後に聞いていこうと思います。西澤さんが選ばれた2曲目。