サブカル文脈から読み解く2010年代のアイドル、ももいろクローバーZとでんぱ組.inc
中島みゆきから、やくしまるえつこまで
Z伝説 ~終わりなき革命~ / ももいろクローバーZ 田家:2011年7月発売、4枚目のシングル「Z伝説~終わりなき革命~」これはZがついた最初のシングルだそうですね。 西澤:だいぶサブカルという感じがする曲で。 田家:おもしろい曲ですよね。これも詞曲が前山田健一さん、ヒャダインなんですけども。ヒャダインさんはももクロと縁が深いですね。 西澤:「行くぜっ! 怪盗少女」を書いてみて相性がよかったんでしょうね。そこから深く関わるようになりという感じで。あと、時代を感じますよね。展開が多かったり。 田家:転調が多いですもんね。 西澤:いきなりナレーションとかが入っちゃうのも、やっぱり考えられないというか、特にアイドルの楽曲でいうと、僕も最初聴いたとき驚きましたね。 田家:路上が始まって、その後でワゴン車で車中泊をしながら全国を回っている。 西澤:最初はヤマダ電機のインディーズレーベル(Happy Music Records)からリリースしていたんですよ。そこでCDを出せば、ヤマダ電機にCDが置かれるし、ヤマダ電機でライブができる。全国にヤマダ電機があるので、そこを回ろうという。だから、ものすごくDIYというかインディペンデントなんですよね。 田家:インディペンデント中のインディペンデント、すごいなあ(笑)。 西澤:特徴的なのが名物マネージャーの川上アキラさんという方がいらっしゃって、その方がプロレス好きなんですよ。地方を車で巡業していくというのも含め、プロレスカルチャーから転用してアイドルカルチャーに持ってきているという。 田家:すごいなあ。ヤマダ電機とプロレスと(笑)。そういう一人のマネージャーから始まっているという。 西澤:2010年代のアイドルシーン、特に地下アイドルと呼ばれるシーンは名物マネージャーや裏方も重要な存在としていますね。 田家:「Z伝説」と「怪盗少女」が入ったデビュー・アルバム『バトル アンド ロマンス』は、CDショップ大賞を受賞しているんですね。 西澤:はい。お店の方からもかなり愛されていて、タワーレコードとかへ行ってもかなり大きく展開されていて。お店の方がちゃんとポップや推薦コメントを書いたりしていた。ライブハウスだったり、CDショップなど、音楽の現場に近い人からしっかり支持されていたグループなんだなというのがありましたね。 田家:メインストリームはテレビが牛耳っていましたからね。そうじゃないところから始まった。これぞサブカルという始まり。西澤さんが選ばれた3曲目です。 Z女戦争 / ももいろクローバーZ 田家:2012年6月発売、8枚目のシングル、ももいろクローバーZ「Z女戦争」。作詞作曲がティカ・αという人で、これ誰だろうと思ったら、やくしまるえつこさん。元相対性理論。 西澤:2000年代後半を中心に、THEサブカルチャーの文脈を作ったグループの1つですね。 田家:こういう人たちをちゃんと選んでいるという。 西澤:そこのセンスの良さと言うのも変なんですけど、中島みゆきさんから、やくしまるさんまですごく幅広く作詞作曲されているのがももクロのすごいところだなと思いますよね。 田家:歌詞の中に健康ランドが出ていたかと思えば、デューク・エリントンまで出てきちゃって(笑)。このハチャメチャな。 西澤:やくしまるさんワールドという感じがしますよね。 田家:この曲の入ったアルバムは2013年の2枚目で『5TH DIMENSION』。これはアルバムチャート1位で、作家を見たら前山田健一さんとか、いとうせいこうさん、大槻ケンヂさん、岩里祐穂さんとか。僕がももクロを一番最初にえ!おもしろいなと思ったのが、大槻ケンヂさんが詞を書いた「労働讃歌」だったんですよ。働け働けっていう、こんなことを歌うアイドルがっていうのが最初のインパクトでしたね。 西澤:ある意味、いろいろなクリエイターとかに門徒が開かれた。誰か一人が作り上げるというより、仲間の中でこういうのがおもしろいんじゃないか、この人を呼ぼうみたいなアイデアが出たとき、それを体現する場としても、アイドルカルチャーが広がっていったのかなと思いますね。 田家:それこそサブカルということで、西澤さんが選ばれた4曲目です。 サラバ、愛しき悲しみたちよ / ももいろクローバーZ 田家:2012年11月発売、ももいろクローバーZ、9枚目のシングル「サラバ、愛しき悲しみたちよ」。作詞が岩里祐穂さんで作曲が布袋寅泰さん。このコンビは今井美樹さんの最も売れているシングル「PIECE OF MY WISH」を作った2人なのですが(笑)。 西澤:いや、すごいですよね(笑)。意図せずだったんですけども、「J-POP LEGEND FORUM」、「J-POP LEGEND CAFE」で紹介されている楽曲とすごくつながる部分が多くて、ちょっとびっくりしちゃって。田家さんはどういうふうに聴かれるんだろうと思って、楽しみに選ばせていただきました。 田家:じゃあ僕がここにいるのは、1つの必然だというふうに(笑)。 西澤:田家さんがずっと見られてきた歴史の中で、必然的に生まれたグループだなと思いますね。 田家:布袋さんは一度は断ったというのをどこかで見ましたよ。 西澤:それを周りの方が説得して。 田家:最初はなんで俺がアイドル書くんだよって思ったでしょうからね。 西澤:2012年頃は、ここまでアイドルに楽曲提供しているアーティストは多くなかったと思うので、本当に初めて触れるぐらいのカルチャーだったのかもしれないですね。 田家:氣志團とかKISSともコラボしているでしょう。西武スタジアムに見に行ったことがあって、全然予備知識はなくて、なんかおもしろいことをやっているらしいねって言ったら、こうせつさんが出ていたりね(笑)。武部聡志さんが音楽監督をやっていたり。え、武部さんがやっているんだと思ったのがインパクトありましたね。 西澤:本当にいろいろな人が関わってらっしゃる。 田家:布袋さんもステージに出ております。ももクロ革命という言い方はできそうですかね。 西澤:確実に革命は起こしていると思いますね。 田家:後半はでんぱ組.inc。西澤さんが選ばれたのはまずこの曲。