サブカル文脈から読み解く2010年代のアイドル、ももいろクローバーZとでんぱ組.inc
オタク・カルチャーを体現したアイドル・グループ
Future Diver / でんぱ組.inc 田家:2011年11月発売、でんぱ組.inc、3枚目のシングル「Future Diver」。作詞が畑亜貴さん、作曲が小池雅也さん。2人ともアニメ・ソングで知られている方で、編曲が前山田健一さん。メインの秋元、サブのヒャダイン。でんぱ組.incは秋葉原発の7人組。 西澤:でんぱ組.incは、秋葉原を代表するようなグループで、所謂オタク・カルチャーを最初に体現したアイドル・グループだと思いますね。 田家:ライブバーがあって、そこの店員さんだった? 西澤:もともとプロデューサーが福嶋麻衣子さんという方で、通称もふくちゃんと呼ばれているんですけど、その方がアキバカルチャーが好きで。平日の営業していないクラブを貸し切って、ライブハウスとメイドカルチャーを合体させたような場所を作ってやっていて、それが好評だったということで、ディアステージという場所を始めた。そこから派生して生まれたアイドル・グループがでんぱ組.incだったという。 田家:その社長さん、もふくちゃんは藝大の音楽学部を出ている方だという? 西澤:アート寄りの方でもあると思うんです。この時期から、そういうオタクカルチャーにアートというものがかけ合わされ始めたというか。村上隆さんとか蜷川実花さんとかもそうだと思うんですけど。 田家:村上隆さんってポップアートの村上さん? 西澤:そうですね。今でこそクールジャパンみたいに言われていますけど、そういう言葉がない時代に目をつけたのがそういう最先端のアートの方だったり、芸術家の方だったりというのがあった時代ですね。 田家:トイズ・ファクトリーと共同レーベルも作っている。 西澤:最初の頃のシングルがこの「Future Diver」なんですね。これ以前は、アニメとか秋葉原っぽい感じの楽曲が多かったんですけど、このあたりからもうちょっと電波ソングと言われる曲だったり、展開が多かったり、BPMが速かったり特徴が強くなっていった。 田家:電波ソングという言葉があるのも、今回初めて知りました。 くちづけキボンヌ / でんぱ組.inc 田家:2013年10月発売、でんぱ組.incの「くちづけキボンヌ」。作詞がかせきさいだぁ、作曲が木暮晋也さん。かせきさいだぁははっぴいえんどチルドレンで松本隆さんのフォロワーですね。木暮さんは元FIXWELL。これいい曲だなと思ったら、そういう2人でしたね(笑)。 西澤:僕も当時ライブを見に行ったときに知った曲で。「Future Driver」みたいな速い曲の中にこれが入っていて、すごくいい曲だなと思って。それで印象に残っていて選曲させていただきました。 田家:この曲の入った5曲入りのCDがありまして、その中にオザケンの「強い気持ち・強い愛」が入ってましたね。 西澤:文脈はすごいわかりますよね。 田家:わかりますよね。こういう曲が流れていると、先週までの違和感が全然ないなという感じですね。スチャダラパーのBoseとかTOKYO No.1 SOUL SETの渡辺俊美さんの曲があったり、アキバ系と渋谷系が一緒になっているという。さっきおっしゃった電波ソングという言葉、それはちゃんと言葉としてあった? 西澤:明確にどこかのメディアが言ったというわけではなく、インターネットの普及とともに、いつの間にかアイドルシーンのお客さんは使うようになっていましたね。大元は、「萌え」要素が含また楽曲のことなんですが、でんぱ組の曲を聴くと、スピード感がすごいあって、所謂シンセサイザー的な上モノのピコピコした音があり、内容も抽象的だったりする。掴みどころがないような近未来感がする感じがする、アップデートされた楽曲という感じがします。