命の移ろいうたう俳句と各界の著名人や動物が囲む釈迦…巨大涅槃図、京都・西来院で公開へ
俳人の黛(まゆずみ)まどかさんと壁画絵師、木村英輝さん(82)がコラボレーションし、ユニークな「俳句涅槃(ねはん)図」を完成させた。黛さんが5年前に亡くなった父の追悼のために考案。四季の移ろいをうたった俳句37句をちりばめ、横たわる釈迦(しゃか)を各界の著名人や動物が囲むという珍しい仕様だ。10日から建仁寺塔頭(たっちゅう)・西来(せいらい)院(京都市東山区)で公開される。 「いのちへのオマージュ」がテーマ。縦2・4メートル、横3メートルの白いキャンバス地に、イベントカラーと呼ばれる特殊な絵の具を用い、木村さんが約2カ月をかけて仕上げた。最後に、和紙に書かれた黛さんの俳句を全体に貼り付けて完成させた。 黛さんは令和2年秋、俳句の師でもあった父の執(しゅう)さんを亡くした。喪失感から新たな俳句を作れない時期が続いた。そんな中、本法(ほんぽう)寺(京都市上京区)の長谷川等伯筆の涅槃図を目にし、父の追悼のために俳句で涅槃図を作ろうと考えた。最愛の息子、久蔵の死から立ち直れなかった等伯が61歳となり、供養のため再び筆を執ったことを知り、「同じ状況だった自らの姿に重なった」(黛さん)という。 2人がコラボした涅槃図の制作は昨年秋から始まった。「俳句とロックは、どちらもシンプルで分かりやすい点が共通している」と木村さん。黛さんは「俳句は四季の移ろいすなわち、命の移ろいをうたうもの。明るく命をたたえる思いで作った」と応じた。 涅槃図の中央には、執さんの句「朴(ほお)の木に 朴の花泛(う)く 月夜かな」と、それに応える黛さんの句「現(うつ)し世を 抽(ぬき)んでて咲く 朴ひとつ」が掲げられている。また、ジョン・レノンやアンディ・ウォーホルら海外の著名アーティストに加え、聖徳太子や清少納言ら日本の偉人らも登場。長らくロックイベントに関わるプロデューサーとして活躍した後に壁画絵師に転身し、「キーヤン」の愛称で親しまれる木村さんは「ロックな生き方をした人物を選んで描いた」と話す。 西来院の雲林院宗碩(うんりんいん・そうせき)住職は「人はみな仏弟子であり、釈迦は人を友と呼んだ。300~400年後にこの絵を見た人は、お釈迦様をみんながお慕いしていたことが分かるのではないか」と話した。
観光キャンペーン「京の冬の旅」(3月18日まで)の京都非公開文化財特別公開の一環として披露される。西来院の拝観料は中学生以上800円、小学生400円。