【入居一時金4億円超えの部屋も】超高級老人ホーム「サクラビア成城」潜入取材で見えた破格の内情
話題の一冊である『ルポ 超高級老人ホーム』の内容を一部抜粋、再編集してお届けする。 【写真】入居一時金4億円超の部屋も…超高級老人ホームへ潜入! 入居金3億円超えなど、破格の条件が求められる「超高級老人ホーム」。なかでも1988年に開業した東京都世田谷区の「サクラビア成城」は先駆けといえる存在だ。 そこで、実際にサクラビア成城の内部を見学させてもらうことにした。案内してくれたのは、お客様相談室の主任、石塚幸一氏(仮名)だ。サクラビア成城に勤務してから16年経つという石塚氏もまた老人ホームの職員という雰囲気はなく、若くて爽やかなホテルマンといった印象である。 お客様相談室とは、いわゆる営業部署のことだ。石塚氏は一昨年から同部署に配属されたそうだが、それまでは居住者と直接対面し、日々の生活をサポートする「ハウスキーパー」という部署にいたという。 「お住まいの方の御用聞きというか、困ったことがあったらお手伝いする部署にいました。細かいことで言えば、瓶の蓋が開かなくなったから開けてほしいとか、高い所のものに手が届かないから取ってほしいとか。衣替えをしたいから手伝ってほしいとか」 雑用をするための専門部署があることに驚いた。入居者の困りごとは所属部署に関係なく、頼まれたスタッフや気付いたスタッフが快く応じてくれるものだと思っていたからだ。 石塚氏に館内を案内してもらう途中、居室の前で女性の清掃スタッフから、「こんにちは!」と明るく声をかけられた。エレベーターでの移動中も、途中階で居住者が乗り込んでくる際は、石塚氏は素早くエレベーターを降りて「お先にどうぞ」と対応する。その様子が一流ホテルにありそうな光景だった。 代わりにエレベーターに乗り込んだ居住者の男性は仕立てのよいスーツを纏い愛想よくお辞儀を返してきたが、その家族と思われる若い女性が私たちと目を合わせようとしなかったのが気になった。 まずは、標準的な居室である約68平米のモデルルームに案内された。入居一時金が約1億5千万円以上の室内は、リビングに加えベッドルームがあり、二人で暮らしても十分な広さがある。 キッチンはコンパクトな設計だ。館内にレストランがあるため、室内で頻繁に料理を作ることを想定していないからである。また、一定時間人が通らないと異常を知らせてくれる生活リズムセンサーも標準で装備されている。独居の居住者が室内で倒れていても、すぐに発見できるというわけだ。清掃は月に2回で、管理費に含まれているという。 サクラビア成城の部屋は全室南向きである。モデルルームの室内から窓の外を見ると、すぐ目の前には東急不動産ホールディングスが手掛ける住宅型有料高級老人ホーム「グランクレール成城」が建っていた。 サクラビア成城の競合相手ともいえる同施設は、ホームページを見ると約41平米の部屋で入居一時金が約5千万円と、やや安い。安いといっても、一般的な老人ホームと比べれば、かなり高額だ。さらにグランクレール成城は、常時介護が必要になると、同一建物内の介護住宅へ住み替えが必要になるようだ。 「入居一時金はお一人ですと約1億4千700万円、お二人で暮らすと約1億6千万円です。入居一時金は15年かけて償却しますので、仮に一名でご入居の場合、5年で退去されると、約8340万円を返金します。また15年以上が経過した場合は、入居一時金のお返しはありませんが、月次の費用だけで生活ができます」(石塚氏) ただし、途中で亡くなった者を除いて、15年未満で退去する者はほとんどいないという。この施設に不満がないという意味か、それとも高齢になると生活の変化を避け現状を変えようとしないからなのか。どちらの理由もあるだろうと思った。 ◆原則フルリフォーム、間取り変更も当然対応 続いて石塚氏が案内したのは約92平米の居室だ。ここもモデルルームである。トイレは2つあるが、これは意外と便利だ。介護が必要になったときはトイレ介助に時間がかかる。そのため1つを介護専用にしたり、ゲスト用にしたりすれば使い勝手がよさそうだ。さらに石塚氏のこんな一言に驚かされた。 「お部屋は前の方がお出になったら、原則、フルリフォームを行っています。壁も水回りも全部取り外して、スケルトンにしてから再び作り直しています。間取りの変更もご要望があればオプション対応させていただいています」 フルリフォームをするとなると相当なコストがかかるはず。ハード面でのこうした手間も、入居一時金が高額な理由の一つなのだろう。 ◆優越感を具現化した設備の数々 3階は全て娯楽のエリアとなっている。いろいろなジャンルの本を取り揃えたライブラリーは定期的に新刊も入れているという。同じ階には美容室もある。週に4日営業しており、ホテルなどにも入っている美容家・遠藤波津子(はつこ)の美容室だ。その奥には、工作などができるアトリエを備えており、取材時はネイル教室が催されていた。 廊下を歩くと、大人が両手を広げたくらい大きな地球儀が飾られている。「飛鳥」や「にっぽん丸」といった、豪華客船の常連客だけに与えられる非売品の地球儀だという。 「豪華客船に頻繁に乗っていらっしゃる方がいまして。その方が記念に貰ったものを寄贈してくださいました」 何ヵ月間も船旅に出かけ、帰ってきてしばらくすると再び船旅に出かけていくという強者もいたそうだ。まるで豪華客船が居心地のいい老人ホームのようである。 取材・文:甚野博則
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