続発する「M&Aトラブル」の最新実態。船井電機は破産、朝日出版社では取締役全員解任!
M&Aとは、企業の「合併と買収(Mergers and Acquisitions)」。うまくいけば、売り手企業は後継者問題の解決・従業員の雇用維持など、買い手企業は事業拡大・従業員確保などが可能になる。 【写真】新代表取締役社長が就任時に社内で配布した文書 しかし、昨今M&Aにまつわるトラブルが続出。M&Aの最中で突如取締役が解任された朝日出版社とその関係者、中小企業論の専門家に話を聞いた。 ■異常に安い買収価格。好条件の提案も拒否 日本企業によるM&A件数は今年上半期に過去最高を更新。その一方、M&Aに端を発する急速な財務悪化で老舗AV機器メーカーの「船井電機」が破産したように、M&Aを巡るトラブルも後を絶たない。1962年設立の中堅出版社「朝日出版社」が、まさに今その渦中にある。 創業者のおいで、前代表取締役社長の小川洋一郎氏が、次のように説明する。 「昨年4月、創業者で会長の原雅久が死去しました。原が100%保有していた株式は奥さまと娘さんが相続され、私たち経営陣はご遺族からの自社株買いを検討していました。 しかし、今年5月にご遺族側の金融アドバイザリー『マクサス・コーポレートアドバイザリー』(以下、マクサス)から突如ある会社に売却すると告げられました」 この会社とは、都内に本店を置く「戸田事務所」。不動産や物流、印刷事業などを手がける戸田学氏が代表を務める。文化産業信用組合という出版業界の信用組合の総代でもあり、神保町界隈では知られた人物だという。 「ところが、戸田事務所が提示した買収価格は4億6600万円と異常に安かった。弊社は九段下の自社ビルなどの不動産も所有しており、金融機関などから資産価値は10億円以上と聞いていました。 そこで、株主さまにお願いの上、私たちでも出版事業に理解のある企業を探しましたが、それとは別に8月9日に取引先の印刷会社から7億円での買収意向が伝えられました。 その後、戸田事務所は約8億円に引き上げたようで、印刷会社は最終的に10億円を提示しました。しかし、マクサスはこの提案を正式に検討すること自体を拒否。