続発する「M&Aトラブル」の最新実態。船井電機は破産、朝日出版社では取締役全員解任!
しかし、こうした報道の裏側で現場の混迷は深まっていた。朝日出版社労働組合執行委員長の小島光歩氏が言う。 「池田氏の業務代理人を名乗る方が来社された際、弊社の小川に対して10月23日までに本社ビルの根抵当権を外すよう強く要求し、みんな『その日に何があるのか』と戦々恐々としました。 これは後に判明したのですが、体調不良のはずの池田氏を唯一の取締役として、『朝日出版社HD(ホールディングス)』なる株式会社が23日付で設立されていたのです。 登記記録から確認できた住所は、弊社とまったく同じ。どういう経緯で、なんの目的で新会社を設立したのか今も不明であり、従業員は強く不安を抱いています」 社内の動揺がいっそう強まる中、同月28日に定時株主総会が実施され、取引先各位には「役員人事に関するお知らせ」が配布された。 新たな代表取締役社長は朝日出版社OBの齋藤和邦氏。業務執行役員兼社長室長に、子会社・ブックマン社の元社長である木谷仁哉氏が就任した。 「これは妥当な人選であるとは思えません。齋藤氏は確かに弊社OBですが、大学在学中の1983年に入社し、その5年後に退社。在籍は20代の5年間だけで、その後は主に医療や保健関係のソーシャルビジネスをご専門にしてきたそうです。 木谷氏も子会社の社長経験者ですが、今は80代半ばの高齢であり、どのような経緯で選出されたのか不思議です」(小島氏) 遺族のふたりは役員を退任したが、体調不良で出社していない池田氏は、「副社長として留任」とされたことも社内の不信感を強めた(しかも、池田氏は11月13日現在も登記上は代表取締役であることが発覚)。 翌日、経営陣解任などを決めた株主決議は存在しないとして、小川氏ら旧経営陣が東京地裁に提訴する会見を開く。すると、新代表取締役社長の齋藤氏が出社し、今後の経営方針を説明すると通達された。 ■出社した新代表の驚きの「経営方針」 10月30日、新代表の齋藤氏が弁護士を伴って出社。自身の経営方針をまとめた1枚の紙を社員に配布した。