米不足で露呈した「日本の農政」の異様さ…「日本の米に未来はない」と専門家が断言する、衝撃の理由
いざとなれば罰則で脅す
2024年6月、「食料供給困難事態対策法」が成立。有事や異常気象などの緊急事態には、政府がコメやサツマイモ、ジャガイモなどカロリーの高い作物への生産転換を指示できることになった。簡単に書くと、輸入・生産拡大や出荷・販売調整の計画作成と届け出を政府に指示し、従わなければ、20万円以下の罰金を科すという法律だ。 「価格転嫁ができずバタバタ倒れている米農家を支援せず、いざとなれば罰則で脅し、コメを作らせる。そんなアホな発想しかできないんです」
コメの備蓄を進めるべき
今後、日本はどうすべきなのか。 「コメの増産を奨励すべきです。生産量は農家に一任する。赤字になりそうなときは政府が補填する。コメができすぎたときは買い取り、備蓄すべきです」 中国では有事に備えて14億人の国民が1年半食べられるだけの備蓄をするため、世界中の穀物を買い占めているという。 「現在、日本のコメの備蓄量は100万トン。全国民の1.5か月分しか確保されていません」 鈴木先生が提案している超党派議員法案がある。数兆円規模の援助金を農家に出す「(仮称)食料安全保障推進法」だ。 「超党派の議員連盟『協同組合振興研究議員連盟』が検討してくれています。自民党の『責任ある積極財政を推進する議員連盟』の方々をはじめ、自民党からも多くの賛同を得られる可能性があります」
「日本のコメ」の未来
日本のコメに未来はあるのか。 「いまのままではありません。あと5年もつかどうか。そのことを政府はわかっているのか」 日本の農業は風前の灯火(ともしび)である。農家の平均年齢は68.4歳。フランスの農家の平均年齢は51.4歳であることを考えると、これがいかに異常な数字かがわかるだろう。(『国民は知らない『食料危機』と『財務省』の不適切な関係』鈴木宣弘・森永卓郎共著より) 安い輸入小麦に飛びついてきた結果、コメの消費量が減り続けてきた。高いのなんのと言わず、地元産のコメを食べるようにすれば農家が助かるし、結果的に自分たちも助かる。 「そのためにも地元産のコメを地元で消費する、循環させる仕組みをつくるべきだ、と私は提案しています。そのひとつが学校給食です」 千葉県いすみ市では2017年以来、市内の全小中学校(公立小学校10校と公立中学校3校)の学校給食を地元産の有機米を提供している。その後、野菜も地元産有機野菜に変わった。その話を鈴木先生のセミナーで聞いた京都府亀岡市の市長は、亀岡市でも地元産のオーガニック米の給食を実施することにした。 「給食を核にした地域循環が各地で盛んになり、国内で地元でとれたコメや野菜を大事にする食生活を見直すことができれば、流れを変えられます。少々高くても地元のコメをもっと食べるべきです」