ジョー・バイデン氏ってどんな人? 米国の「次期大統領」
不安要因は年齢
――強みがある一方で、弱みはどういうところでしょうか。 長年ワシントンにいて、ある程度妥協の術に長けた分だけ、あまりトランプ大統領のような、良くも悪くも破壊力みたいなものはありません。 あとは、やはり年齢ではないでしょうか。1期を全うしたとしても、そのあと再選するとなるともう82歳です。そうなると体力的な面などから、必然的に制限はかかってくるでしょう。
バイデン氏の最初の仕事は?
――米国社会の分断があらわになったトランプ政権が終わります。バイデン氏の最初の仕事は何でしょうか。 社会の分断は構造的なものでもあるため、バイデン氏1人にできることはかなり限られているかもしれません。しかし、トランプ大統領のように分断や対立を確信犯的に煽(あお)るようなことをやらないだけでも社会の雰囲気というのはずいぶん変わってくると思います。 また、いまはただでさえ党派対立が激しくなっている局面です。そのため、あまり党派色が強いアジェンダを最初から出すことはないのではないでしょうか。まずはコロナ対策や景気の回復・立て直しなど国民全員の関心が高い課題で、ある程度実績を作っていくことが重要です。それは本質的に分断を解消するということではなく、表面的な融和にしかならないかも知れませんが、いきなり構造から変えるというのも難しい話なので、まずはそれらのテーマを1、2年かけてやっていくっていうことだと思います。 ■渡辺靖(わたなべ・やすし) 1967年生まれ。1997年ハーバード大学より博士号(社会人類学)取得、2005年より現職。主著に『アフター・アメリカ』(慶應義塾大学出版会、サントリー学芸賞受賞)、『アメリカのジレンマ』(NHK出版)、『沈まぬアメリカ』(新潮社)など。近著に『白人ナショナリズム』(中央公論新社)がある。